ロンドン塔の王子たち / 薔薇戦争の終焉(1)


さて、前回「ヨーク家の薔薇」について書いた勢いで薔薇戦争の終焉について。

ともにプランタジネット朝の国王エドワード3世(在位:1327年 - 1377年 )につながる一族であったヨーク家とランカスター家。
王位をめぐって両家の間で繰り広げられた、陰謀と裏切り、血で血を洗う争いも、やがて終わりを迎えた。
イングランドの王冠を手にしたのはヨーク家のエドワード。
ランカスター派だったエリザベス・ウッドヴィルと結婚し、エドワード4世として即位したものの急逝、そのあと王位についたのがエドワード4世の弟、グロスター公リチャードだった。
グロスター公は、亡き兄の長子エドワード5世を戴冠式挙行直前に退位させ、2歳違いの弟ヨーク公リチャードとともにロンドン塔に幽閉したあと、自身が兄エドワード4世の後を継ぎ、リチャード3世として即位。ヨーク朝を開いた。

時にエドワード5世、12歳。弟リチャード、9歳。
幽閉された二人の王子の消息は長いこと謎とされていた。
王位を狙う叔父にとって、王位継承順位が自分より上になる甥たちは、目障り以上の存在であったのだろうか。
その後の王子たちの姿を見たものはいない。
叔父リチャード3世の手によって暗殺されたというのが通説であるが、真実は未だ闇の中である。
その後、この悲劇的な顛末はシェイクスピアの作品によってイギリスのみならず、世に知られることとなった。


幼きエドワード5世とヨーク公リチャード.JPG
「幼きエドワード5世とヨーク公リチャード」 ポール・ドラローシュ(1797 - 1856)


フランスの画家ドラローシュが描いた二人の王子。
ベッドの上で、互いに身を寄せ合うように座っている兄弟の顔は不安に苛まれ青ざめている。兄エドワード5世が、すべてを諦めたかの如く、虚ろな眼差しで正面を見据えているのに対し、弟のリチャードはおびえながらも気丈な表情で部屋の扉を見つめている。
王子たちの無聊を慰めたであろう愛犬もまた、何者かの不穏な気配を感じたのか、じっと扉の前から動こうとしない。

切り取られた時間。
まさに今、扉の向こうに佇むものは二人の運命。すなわち死。



塔の中の王子たち.JPG
「塔の中の王子たち」ジョン・エヴァレット・ミレー( 1829年 - 1896年)

薄暗がりの階段で途方に暮れたように佇む二人の王子。
その眼差しは昏く、しっかりと握り合った小さな手と手があまりにも悲しく痛ましい。



およそ200年後の1674年、ロンドン塔の地下で子供二人の頭蓋骨が発見された。
死因は謎のまま、ふたりの遺骨は今、ほかの王族とともにウエストミンスター寺院に眠っている。




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この記事へのコメント

katananke05
2020年06月19日 10:12
イギリスは 昔は 王位争いや
後継争いで 目を背けるような
残虐なことを 多くしてきてますね〜
ロンドン塔の 石作りの壁には
塗り込められた人が まだ 残っているかも、、と思います〜
私は狩猟民族の 残虐性は
農耕民族の 比ではないと 密かに?
思っていますよ〜
aosta
2020年06月21日 11:53
◇Katanankeさん

こんにちは。コメントを頂きありがとうございました。
返事が遅くなりましたこと、お詫びいたします。

本当にねぇ。人間って恐いですね。ロンドン塔、夏目漱石も「倫敦島」という小説を書いていますが、この建物に潜む物語は、漱石ならずとも人を誘うものがありますね。
実はこのリチャード3世に関わる小説を読んでいる最中なのですが、事の真相は未だに明らかにされていません。ただ、リチャード3世のものとされる遺骨が見つかり、DNA検査やら、頭蓋骨から複製された人相などから、リチャード3世の人物像について再検討される向きもあるようです。歴史というものは、国や時代を問わず、勝者のもの。リチャード3世の死によって、ヨークは完全に歴史の表舞台から葬られ、代わってチューダー朝の時代になったわけですが、勝者にとって不都合な事実は歪曲され、脚色された歴史となるんですね~。

今朝読み終わったリチャード3世の物語は推理小説の手法で描かれているのですが、とても読み応えのある作品でした(^^♪
katananke05
2020年06月21日 23:04
なんという題名ですか、、
図書館にあれば 読んで見たいかも、、小難しくない??
aosta
2020年06月22日 14:01
◇Katanankeさん

リチャード3世の素顔を推理するという歴史ミステリはハヤカワ文庫から出ている「時の娘」という本です。作者は1896年生まれのジョセフィン・ティという英国人。1951年発表とあるので、かれこれ70年近く昔の作品なんです。実は私、一度この本を読み始めたのですが、入り組んだ系図、同じ名前の登場人物が多すぎて、頭が混乱して挫折したのでした(;^ω^)

今回は「時の娘」の前にメディアファクトリー文庫の「白薔薇の女王」という上下2巻の文庫をとても興味深く読んだ後だったので、その勢いで読み通すことができたという次第。
「白薔薇の女王」は邦題は陳腐ですが翻訳もこなれてるし、主人公が二人の王子の母親エリザベス・ウッドヴィル、つまり女性の(母親の)視線からかかれているのでわかりやすいの。興味があるようでしたら、まずは「白薔薇の女王」(つまりヨーク家の女王という意味ですね♡)をお読みくださればと思います。
katananke05
2020年06月23日 12:42
ははあ〜
昔は 洋物ばかり読んでましたが
最近は もうカタカナ名前が 覚えきれず
なんども前をめくって読み直し、、で
最近はすっかり日本の作家のものばかり、、
ちょっと これは もうすぐ挫折するかもね〜
でも 情報ありがとう〜
katananke05
2020年06月23日 12:46
今 こちらの市の図書館
ググって見たら 入ってなかった、、
斜め読みでも、、と思ったけど 残念〜
って いささか ホッとしている
katanankeさんで ござんしたよ〜 えへっ
aosta
2020年06月23日 21:52
◇Katanankeさん

私も同じ、翻訳物が大好きで、翻訳小説ばかり読んでいました。
昔は翻訳者も一流で、文学の香り高い文章に外国への憧れを募らせたものでしたが、最近の翻訳は、文章が固い。翻訳者としての基礎的な知識(物語の文化的背景など)に?と思うようなことが多いのです。

その点、「白薔薇の女王」は安心して読めました。
でも登場人物の重複する名前や家系図には、私も大層悩まされました。巻頭の系図や登場人物の紹介を何度も読み返すことが必要で、苦労はしたのですが、物語はことのほか興味深かったですよ。
日本人は宗教への理解が今一つで、カトリックとプロテスタントの違いをきちんと理解している方が少ないことも、残念です。
事に英国史の場合、カトリックとプロテスタントが入り乱れているので、面倒と言えば面倒なのですが。
aosta
2020年06月23日 21:57
◇Katanankeさん

ほっとしたお気持ち、よくわかります(;^ω^)
私にも同じような経験がありますもの。

図書館になければ仕方ない、と自分に呟いてみる(笑)
労多くして実りが少ない(かもしれないことを考えれば)、あえて冒険はしたくないですよね。
2020年06月30日 15:24
お久しぶりです~。
相変わらず優雅な雰囲気漂うブログで心が潤ういます。こんな時世では、なお更うれしいです。

エドワード3世の陰謀といい、エリザベス1世とメアリ・スチュワートの確執といい、イングランド王家の歴史も闇に怨念が渦をまいていますね。
日本だと祇園精舎、英国はウエストミンスターの鐘の聲に栄枯盛衰を感じるというところでしょうか...


aosta
2020年07月02日 10:55
◇Karabinkaさん

こうして再び、karabinkaさんのお名前をこのブログで発見できるなんて、本当に嬉しいです。訪ねてくださる方も少なくなり、マイペースで書きたいことを書いていこうと、再開しました。いつまで続けられるか不安がないでもありませんが、まずは新しい一歩です。

私の日常は、優雅とは程遠く、なにやかや雑事に追われる毎日です。コロナの感染が拡大して以来、夫も私も完全失業状態。かつて、時間があれば思い切り本も読めるのに、と嘆いていたはずなのに、時間ができた今、思っていたほど読書がはかどらないのはなぜかしら。未聴のCDもほとんど手つかずのまま。いつも心がざわざわと落ち着きません。
ブログの再開は、それやこれの事情が後押ししてくれたおかげなのかもしれませんね。

いずれにせよ、こうしてまたKarabiさんとお話ができたことが何よりです。