朗読とリコーダーによる 『塔の物語』




その昔、小学生の頃の私が初めて読んだ塔の物語はグリムの「いばら姫」そして「ラプンツエル」。


幻想と謎と満ちた塔を巡る物語は、幼い私を魅了しました。
ある意味において、その時、私も塔に捕らわれたのかもしれません。
以来、現在に至るまで、塔への偏愛は変わることがないのですから。


あるときはかたくなに人を拒み、またある時は時空を超えて人を誘う「塔」。
塔は失われた記憶の中で、自らの物語を紡ぎ続けているのです。




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角川文庫 異形アンソロジー タロットボックスⅠ「塔の物語」





マーガリタ・ラスキーの「塔」は、そうした「塔の物語」の中でも、際立って印象に残る作品です。
16世紀に建てられて以降、打ち捨てられていたまま荒廃していった塔。
建てられた当初から変わることなく、一点に向かって集約していく「塔の記憶」。
わずか20ページにも満たない小品ながら、読むたびにその密度の高い精緻なプロットが私を圧倒します。
いつかこの作品を朗読したいと思うようになって長い時間が経ちましたが、
思いがけずも、その願いが叶うこととなりました。

自ら読む、という体験と、「聞く」という体験は似て非なるもの。
視覚的情報が一切ないところで、耳を澄ませるという行為。それは物語の原点でもあります。
物語を「聞く」という時間が失われて久しい現在、目ではなく、耳から物語を想像するという体験は、
新しい物語世界への入り口となるかもしれません。
朗読にあえてマイクは使いません。
これは主催者の要望でもあり、私の本意とするところでもあります。
肉声だからこそ、いえ、肉声でなければ伝わらないものが確かにあると思うが故です。

三半規管にこだまする物語で、聞く人を異界へと連れ去ることができたら、冥利に尽きるところです。



今回の朗読は、言うならば塔を巡る旅に似ています。
旅の始まりとして私が選んだのは中野美代子「カリヤーンの塔」。
それから、今回の朗読のメインであるラスキーの「塔」を読み、最後に、堀敏実の「塔」で旅は完結します。
いえ、完結したかに見えるかもしれません。
でも、本当の物語が始まるのは、もしかしたら朗読が終わったとき。
物語には終わりがありません。物語は記憶とともに育つものなのですから。



いずれも異なった場所、異なった時間、異なった印象の作品をつないでゆくのは、16世紀イタリア・ルネサンスの作曲家カルロ・ジェズアルドの音楽です。
不貞の妻とその愛人を殺したことで、長い間歴史の表舞台から忘れ去られていたジェズアルドが再評価されるようになったのは、20世紀になってからの事でした。彼の音楽は、転調や対斜、リズムの激しい対比で知られていますが、何よりも特徴的なことは、彼の死後、19世紀ロマン派の時代まで現れることなかった半音階的音楽語法にあります。崩壊を予感する調整や不協和音にみちた彼の音楽によって、幻想的で不可思議な塔の物語は、より深度を増すことでしょう。
また、後奏というのには少々長いかもしれませんが、ジェズアルドが生きた時代をを遡ること300年、中世フランスの作曲家ギョーム・ド・マショーの「ノートルダム・ミサ」も魅惑的な不協和音の音楽ということで、リコーダ演奏も合わせてお楽しみください。








         朗読とリコーダーによる 「塔の物語」

                              朗読 岡埜葡萄  リコーダー演奏 武藤哲也



             6月1日(日) 19:00~   定員 20名
             諏訪郡富士見町 ギャラリー36
             入場料 1500円(飲み物、お菓子つき)
                      
  

                            
    
                        「ギャラリー36」
                        中央線富士見駅前商店街(駅より徒歩3分) 駐車場有り


 

     朗 読 



   ◇マーガリタ・ラスキー作 大村美根子訳 「塔」

 
          翻訳者による作者のプロフィールによれば、
          「英国の高名な思想家ハロルド・ジョセフ・ラスキーの血を引く女流作家、評論家」とあるが、
          日本ではほとんど知られていないミステリアスな作家である。


   ◇中野美代子 「カリヤーンの塔」
   

          1933年 札幌生まれ
         「契丹伝奇集」、「ゼノンの時計」、「眠る石」などの奇譚集がある。


   ◇堀敏実 「塔」

         1983年「星新一ショートショートコンテストで「角の店」が最優秀賞に選ばれるも、
         以降の発表作品の数は希少。現在消息不明。


                                    以上 角川文庫 異形アンソロジー「塔の物語」解題より抜粋





      リコーダー演奏


         カルロ・ジェズアルド Carlo Gesualdo (1560-1613)
         マドリガーレ 第1集~第6集 より  

         ギヨーム・ド・マショー Guillaume de Machaut (c1300-1377)
         ノートルダム・ミサ
        




                 ☆ お問い合わせ、ご予約は 0266-79-5532 武藤まで











                 ★「塔」をめぐる会話 → http://folli-2.at.webry.info/201405/article_8.html


武藤哲也リコーダー&オカリナ教室はこちら → http://folli-2.at.webry.info/201503/article_4.html 








この記事へのコメント

HT
2014年05月18日 16:41
こんにちは。
今度は6月ですか。結構短期間に何度も開かれていらっしゃるのですね。年に何回くらい開かれているのでしょうか?。富士見町、以前はちょくちょく行っていた所でした。今は高速で通り過ぎるだけになってしまいました。頑張ってくださいね。
2014年05月18日 20:27
◇HTさん

いつもコメントおありがとうございます。

>結構短期間に何度も開かれていらっしゃるのですね。

月に一度のコンサート、というのが今年の目標です(^^♪
コンサートホールでの大きなコンサートでしたらそうたびたびというわけにはいかないと思いますが、二人三脚の家内工業、いや家内興行(笑)だからこそできることかもしれません。8月と10月には蓼科と下諏訪のホールで演奏会を予定していますが、たいていはこじんまりとやっております(*^^)v

>頑張ってくださいね。

HTさんにそう仰っていただくと、なんだかとても嬉しいです。
ありがとうございます。
ぶんな
2014年05月18日 21:04
本のカバーに引き込まれ開けたものの、眼精疲労かで字を読むのが厳しい状態、すぐに治ると思いますが。コンサート企画はしっかりと読みました。おもしろそうですね。せきもきっと引っ込んでくれるでしょう。
2014年05月18日 21:38
◇ぶんなさん

眼精疲労ですか?
目の疲れは全身の疲れにもつながります。お大事になさってくださいね。

角川文庫のカバーを外してスキャンした画像です。
いわくありげな塔の絵が気に入っています。
手元にありますのは平成12年の初版。現在は絶版か、重版の見込みなしということで手に入りにくいようです。テーマを塔だけに絞った、マニアックな塔のアンソロジーです。ジェズアルドの半音階的音楽やマショーの不協和音を聴いた時の何か不穏で揺らぐような雰囲気は、「塔の物語」にピッタリだと思います。
まずはP氏の風邪を治さなくては!
2014年05月19日 21:09
Pさんまだ風邪なおりませんか!

同じ気管を使うので大変ですね。
バタバタと原村へ行って、aostaさんにお花頂く前に
お庭作らなくてはとPCも携帯もほったらかして頑張っていたら
連絡するのも忘れていました。

京都に帰るとほっこりしてパソコン開けられるんですが、
庭を走り回っていると何もかも忘れますね。
きっとかっこうの鳴き声に追い立てられてしまったようです。
2014年05月20日 05:13
◇さえさん

来来週って、先週のことだったんですね?!
さえさんがこちらにおいでになるのはいつだったかしら、と思いながら,私も忙しくしていて、気が付きませんでした。
この季節は時間が経つのがすごく早く感じます。
毎日庭に急き立てられるように、雑草を抜き、大きくなりすぎた宿根草を植え替え、はたまた出先で見つけた花苗を、買おうかどうしようかと逡巡し、一週間はあっという間に終わってしまいます。
「あっ!」今、窓の横をキツネが一匹歩いています!
ちょっと年取った感じですが、リズミカルな足取り!キツネを遠くで見かけることはよくありますが、庭先をこんなに悠々と歩いている姿を見るのは初めてです。

おや、思わず脱線してしまいました(^-^;
そうそう、カッコウもここ数日で鳴き始めました。雑木林から低い鳴き声がよく響いてきます。先日見かけた田んぼには、もう水が張られていました。もう青田になっているかもしれません。

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