消えがてのうた part 2

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zoom RSS 島崎光正 「わが上には」  アヴェ・マリアに寄せて

<<   作成日時 : 2010/05/14 22:17   >>

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「母の日にプライヴェートで小さなコンサートを計画しているのですが、お願いできますか?」

近くのベネディクト修道院の神父さまからのお思いがけないお話でした。
今年77歳になられるアイルランド系アメリカ人のK神父さまは、十数年来の知己。
たまたま手元にあったP氏の演奏によるCDをお貸ししたところ、数日して正式な依頼となりました。



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コンサートは二部形式。
  第一部   リコーダー演奏(P氏)
  第二部   朗読(aosta)   歌(P氏)


何を朗読するか迷いました。
P氏の演奏する曲をBGMにしての朗読はおよそ3分。
あまり長いものは読めません。
ふと、私の好きな島崎光正さんの詩の一片が頭に浮かびました。
難しい言葉はひとつもない素直な詩ですけれど、深く心に響くものがあります。





                「わが上には」  島崎光正 
 

           神様
           あなたは私から父を奪われました。母を奪われました。
           姉弟もお与えになりません。
           その上、足の自由を奪われました。
           松葉杖をお貸しになり、私はようやく路を歩きます。
           電柱と電柱のあいだが遠く、なかなか早く進めません。
           物を落としても楽に拾えません。
           乳のにおいを知りません。
           母の手を知りません。

           私は何時も雪のつもった野原の中に立っていました。
           鳥の羽も赤い林檎の実も落ちていませんでした。
           私は北をたずねました。
           けれども、知らない人は答えました。それは南であろうと。
           私は南にゆきました。
           また別の人が答えました。それは、北であろうと。
           生まれてから三十年経ちました。
           私は今、机の上にかさねたノートを開いてみるのです。
           此処には悲しみの詩が綴ってあります。

           神様、これはあなたのたまものです。
           恐らくこほろぎの鳴く夜ふけ
           母ある者は、布団の裾をたゝかれ安らかに眠りについたでしよう。
           妻ある者も抱き合いながら眠っていつたでしよう。
           母はふたゝび起きて見るでしよう。
           けれども、私は眠らずに覚めて書きました。
           こんなにぎつしり
           落花のように手帳を埋めました。
           足ある者は、遠く旅立つひまに
           私は更に埋めました。
           おお 幾歳月・・・・・・・
           私の詩は琴のように鳴りました。
           森のように薫りました、いたみは樹液の匂いを放ちました。
           神様、これがあなたのたまものです。


                              詩集 故園・冬の旅抄 : 日本基督教団出版局






詩の朗読は初めての経験です。
ノートを持った手が、傍目にもそれとわかるくらいブルブル震えていました。
マイクはなし。
聴いて下さる方全員のお耳に届くようになるべく大きな声で、発音ははっきりと・・・
というつもりではありましたが、実際は思いとは程遠く、反省する事ばかりの結果となりました。
拙い朗読ではありますが、お聞きいただけましたなら幸いです。
BGM(シューベルトのアヴェ・マリア)のテナーリコーダー演奏はP氏。
ピアノ伴奏はカラオケCDです。

       → http://papalin.yas.mu/W806/M007/



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今回の朗読で一番大きな悔いは、「姉弟」の「姉」の発音が不明瞭であることと、「こほろぎ」のイントネーション。
他にも何か所か、声が裏返っています。
それから間の取り方・・・
数え上げればきりがありません。
でも今まで、彼のコンサートでステージ・マネージャーのまねごとや、司会の経験しかなかった私が、
彼と同じステージに立った初めてのコンサートでした。

「僕の演奏の合間に、何か読んでみない?」
彼のその一言で実現した今回の朗読は、反省と同時におおきな喜びを頂いた素敵な経験となりました。




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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
aostaさん、もう聴かせていただきました。とても良かったです。この詩を選んでくださったaostaさんに感謝します。

修道院、静けさの満ちた簡素な、神と過ごすにはよいところですね。わたしはプロテスタントですが、たまに修道院の前まで行き、ベンチに座ってきます。やはり高い風通しの良い灌木に囲まれたところにあります。木曜日に礼拝があるらしいのですが。

お二人のコラボに耳を澄ましました。papalinさんのリコーダー、そしてaostaさんの朗読。神様がにこやかにご嘉納くださったのではないでしょうか。

島崎光正さん。何から何まで不勉強で、初めて知りました。

>私の詩は琴のように鳴りました。
 森のように薫りました、
 いたみは樹液の匂いを放ちました。
 神様、これがあなたのたまものです。

すばらしいですね。リコーダーと朗読とで、いよいよこの胸に染みる詩が琴のように鳴り、森のように薫り、樹液の匂いを放ちましたね。
感謝でした。
bunbun
2010/05/15 11:02
こんばんは。
コンサートで詩を朗読されたのですか。
素敵な事されましたですね。aostaさんにとても似合っているように感じられました。
始めてだったのですか。以前からそう云う活動されていたかのように思われました。私のブログに来られている方で、身体に障害のある人を訪問して朗読をされている方がおります。そんな感じななって…。
素敵ですね。
HT
2010/05/15 20:20
おはようございます。朗読拝聴しました。素敵なお声ですね♪初めてとは思えない、落ち着いた朗読でしたよ。清々しい朝となりました。
島崎光正という詩人は知りませんでしたが、染み通る詩でした。近くに修道院があるとは、また素敵ですね。森の中の修道院・・・憧れます(私はクリスチャンではないのですが、かつて目指そうとしていた事があり、今でも半分は・・・。なので、ものすごく魅かれます)。「アヴェマリア」は大好きで、シューベルトはやさしいですよね。中でも私はカッチーニがお気に入りです。
琳々
2010/05/16 06:21
◇bunbunさん

コメントありがとうございます。
長崎で生まれた島崎さんは長崎で生を受けましたが、生後一か月の時、医者であったお父上は患者さんのチフスのチフスが感染して亡くなりました。当時23歳だったお母様は島崎さんを信州のご主人の実家に預け、長崎に帰る途中、かつて夫君が勤務していた福岡の大学病院の精神科に入院したまま、長崎に帰ることなく20年後に亡くなられたということです。
脊椎二分症という病を背負って生まれた島崎さんは祖母に愛情深く育てられましたが、終生、痛みに満ちた母の愛と両下肢の不自由と向かい合い、祈りの末にご両親の痛みに満ちた人生と自らのハンディを受容し、信仰に生きた人でありました。何も難しいところのない詩がこんなにも読む人の心を打つのは、島崎さんが流した涙の熱さ故でしょうか。

今回のコンサートで、詩を読む事と、朗読とは全く別物であることを改めて実感しました。
私の朗読で、一体どれほどのものが伝えられただろうかと、赤面の至りではあります。
P氏のリコーダー演奏に助けられたことが大でした。
音楽には言葉がない分、心の奥底にまで届く力があります。
P氏の演奏が、私の朗読に魂を吹き込んでくれた事を心から感謝するところです。
本文記事にあります島崎さんのお名前に略歴をリンクいたしましたのでご覧いただければ嬉しいです。
aosta
2010/05/16 17:55
◇HTさん、こんにちは♪

>始めてだったのですか。

朗読は以前から好きでしたし、ほとんどが顔見知りのごくごくプラーヴェートな場で詩を読んだことはありましたが、曲がりなりにもコンサートのプログラムの一つとして皆さまに聴いていただいたのは今回が初めての経験でした。
音楽に合わせての朗読、というのも初めての試みでした。BGMはピアノ伴奏のCDに合わせてのリコーダー演奏。万が一私が間違えてもCDは待っていてくれません(涙)。リコーダーの演奏とてCDに合わせるのですから私を待っていてはいられませんし・・・
お聞き苦しいところもあったと思いますが、最後までお聞き下さってありがとうございました。


aosta
2010/05/16 18:06
◇琳々さん

コメントありがとうございました。
何だかとっても恥ずかしいです(笑)
リハーサルの時、写真撮影などのお手伝いをお願いした書記さんから、BGMに負けて声が聴こえないよ、と言われ、本番ではかなり意識して大きな声で読んだのですが、普段とは違う発声は難しいですね。発音もしかりです。
録音を聴いても、出るのはため息ばかり(笑)。

自宅周辺には複数の修道院が点在しています。
喧騒を離れ、自然に囲まれた場所がまさに黙想と祈りの場として選ばれたのでしょう。
訪れる人も自然と祈りに導かれるような素晴らしい修道院です。
私はカトリックの環境で育ちましたが、大学はプロテスタントのミッションでした。
私にとってカトリックとプロテスタントは違和感なく一つになっています。

>ものすごく魅かれます。
琳々さんが共感してくださってとても嬉しいです。

カッチーニのアヴェ・マリアは私も大好きです!
「アヴェマリア」を繰り返すだけの歌詞なのに、この曲を聴いていると、心が浄化されていくように透明で静謐な気持になります。
琳々さんがお好きなボーイソプラノではありませんが、我がP氏もこの「アヴェ・マリア」をうたっておりますので、よろしければ添付しましたURLをクリックして聴いてみてください。
aosta
URL
2010/05/16 18:30
島崎さんの詩は、私もはじめてでしたが、aostaさんの声とP氏のリコーダーが一つに紡がれて会場にいらしていた方全員の心に届く朗読でしたよ。ご本人的には反省もおありでしょうが、初の試みとしては上出来だったのではないでしょうか?ということで第二、第三のコラボをお待ちしております(^_^)。
書記
URL
2010/05/16 21:22
◇書記さん

おはようございます。
その節はありがとうございました。
早く来ていただいたことをいいことに、いろいろお願いしちゃってすみません!!
書記さんが居て下さったおかげで、何だかすごく安心できましたし、第一にとても楽しかったです。

>第二、第三のコラボをお待ちしております

もし、そのような機会があるようでしたら、また書記さんに甘えてもいいでしょうか?
aosta
2010/05/17 05:32
Papalinさんのところでaostaさんの朗読を聴かせていただきました。
あちらに「島崎光正さんの詩集を持っています。」と書かせていただきましたが、aostaさんが書かれているその詩集で、この詩は大好きな詩です。
実は私の本には島崎さんのサインがあります。
島崎さんには何度かお会いしたことがありますし、講演会も聴いたことがあります。
その講演会でもこの詩について触れていらっしゃいました。
aostaさんなら島崎さんをご存知だろうと思っていましたがやはりそうだったのですね。
素敵なコラボでした。
Cecilia
URL
2010/05/17 08:25
リンクの方、島崎光正さんの詩、読ませていただきました。お母さんへの思慕に涙を禁じ得ませんでした。実は私も9ヶ月で実母に先立たれました。さまざまな思いがあります。ましてこのような苛酷な状況にあってのお気持ちがいかばかりであったかは分ります。せめてこの詩がほんとうに人々に知られ愛されつづける事を願うものです。
有難うございました。
bunbun
2010/05/17 09:41
◇Ceciliaさん

ご無沙汰しています♪
島崎さんの詩、私は私できっとCeciliaさんもご存じだろうとは思っていましたが、ご本人に会ったことがおありになったとは知りませんでした。
島崎さんは、長崎生まれとは言え、その人生のほとんどを信州で過ごされた方であり、松本教会にも浅からぬご縁のあった方でした。

>素敵なコラボでした。

ありがとうございます<m(__)m>
何度聴いても自分の朗読に慣れることができずにいます(笑)。
aosta
2010/05/17 20:07
◇bunbunさん

本当のことを申し上げれば、まず最初に思い浮かんだ詩はこの「早苗といふは」だったのです。でも多分私は最後まで読みとおすことができない、と思いました。
きっと途中で涙で読めなくなってしまいそうな気がしました。
「わが上には」とて、心を揺すぶられる詩ですけれど「早苗というは」に読み取る母親への熱く激しい思慕の想いは、母親である私の中であまりにも大きく振れすぎて「朗読」という形にならないだろうと思ったのです。

>実は私も・・・

bunbunさんのこの言葉は鞭のような音を立てて私の胸を打ちました。
子供を残して先立つ母の想い、また子供に先立たれた母の想い、さまざまな思いが心の中を行き過ぎて言葉がみつかりません。
bunbunさんが今日も明日も守られてありますよう祈ります。

aosta
2010/05/17 20:43
すばらしい詩(祈り)、すばらしい音楽を
楽しませていただきました。ありがとう。
tamayam2
2010/05/22 16:38
◇tamayamさん

コメントありがとうございました。
聴いて下さったのですね。
ありがとうございます。
今回、あらばかりが目立つ今回の朗読をアップいたしましたのは、私自身、客観的に自分の朗読を確認してみたい、という思いがあったからでした。
皆さんに読んで頂きますことがこのブログの目的ではありますが、ブログを始めた当初の目的は、何よりもまず、自分自身の記録を残すことが前提でありました。
そしてこの前提は、今もかわるものではありません。
おそらくは、一つの契機、または始まりである今回のコンサートをあえてアップいたしました背景に、こうした意識があったことは否めません。
まだまだ未熟な今回の朗読をアップいたしましたのも、そのような思いからでした。
今回、そうした想いに呼応するかのように、多くの方からコメントを頂けましたことに感謝しています。
aosta
2010/05/22 23:02

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