テーマ:おはなし

虹を紡ぐひと (もう一つの雲つくりのお話)

海の水は世界の果てで大きな滝となって流れ落ちている。 今では信じる人もいなくなったが、ずっとずっと記憶の向こう、忘れられるほど遠い昔から、 水は轟く雷鳴のような地響きを立てながら滝となってなだれ落ちているのだ。 世界の果てはどこにあるのかって? わしも知らん。セカイノハテは世界の果てさ。 そこには雲つくりた…
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クモツクリのお話

天から轟々と音立ててなだれ落ちて来る滝の近くにクモツクリは住んでいました。 日がな一日、轟くような音を立てている滝には、いつも美しい虹が架っています。 なだれ落ちる水の、目に見えないほど細かな粒子が光を虹色に分散させ、滝つぼに大きな虹の橋をかけるのです。 クモツクリは虹の光を絡め取るために、ひとりで虹の橋を渡っていきま…
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乳母車

美ヶ原と言えば、こんなこともあった。 6月の初め、夫とふたり、松本まで買い物に出かけた帰り道のことだった。 彼が楽器屋さんで楽譜を探している間、私はたいてい隣接するフロアーでCDを選んでいるか、 本屋さんで待っているのが常だ。 いつもなら根が生えたのかと思うくらい長い間、棚の前から動かない彼なのだが、 あの日は…
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霧の森

止んだばかりの雨が重い水蒸気となって森の中に立ちこめていた。 ショ-トカットのつもりで入り込んだ道は、行けども行けども、暗い森の中だった。 しとどの雨で重くなった木々の枝が、厚く立ち込める霧と一緒に視界と聴覚を遮っていた。 霧は、光の差さない森の中で生き物のように音もなく流れ、私たちを脅かした。 車が進む…
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耳の中の緑の帆 (苺ちゃんのおはなし)

さて。 クリちゃんには苺ちゃんという妹がいます。 クリちゃんがお母さんに横抱きにされるようにしてお医者さんに連れて行かれた日、 苺ちゃんは家で一人でお留守番をしていました。 本当は苺ちゃんだって、一緒に行きたかったのですが、お母さんの必死の勢いに怖れをなしただけでなく、 以前連れて行かれたことがある耳鼻科の雰囲…
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耳の中の緑の帆 (クリちゃんのおはなし)

ある日学校から帰ってきたクリちゃんは思いつめたようにお母さんに言いました。 「お母さん、僕の耳ね、この頃ずっとムズムズしてるの。中に、何かいるみたいなんだけど・・・」 いつもランドセルを下ろすやいなや、おやつに直行するクリちゃんにしては珍しい事でした。 「何かいるって・・・ 虫でも入り込んじゃったのかしら?」 …
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