一本杉通りの誘惑Ⅰ(北島屋茶店)




テレビの天気予報を見れば、春の嵐を予感させる大きな低気圧・・・
三日連休のうち晴れマークは初日の20日だけ。

だからと言って、ひと月以上心待ちにしていた旅行を今更取りやめる気にはなれず、予定通り出発しました。
諏訪から一路北上、安房トンネルを抜けて東海北陸自動車道に乗り、富山経由で能登半島へ。
道路の渋滞もなく、お昼前には無事に最初の目的地七尾市に到着です。
七尾で行きたかったところは、市内の「一本杉通り」にあるお店。




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北島屋茶店です。



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ここでお抹茶を石臼で挽かせていただけると聞いていました。



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肌理が細かく滑らかな石でできた石臼は明治時代からずっと使われた来たものだとか。
お店の御主人の手作りだという木製の取っ手は気持よく手に馴染みます。
何回か回しているうち、その重さにも少しづづ慣れて、緩やかに気持よく回る石臼の音に耳を傾けながらひたすら挽き続けました。

石臼は、どことなく金属的で涼しげな、心鎮まる摩擦音を立てながらゆるゆると回ります。
この音を樹々の梢を吹いてゆく風の音にたとえて、茶釜でお湯がたぎる音と同じく「松風」と呼ぶのだというお話にも、なるほどうなずけます。
昔は茶事のたびに、こうして亭主が手ずから客人のためのお茶を挽いたのだと、ご御主人が説明してくださいました。
水屋で亭主が抹茶を挽く「松風」の音に耳を澄ませながら、茶室の客は心静かに待っている・・・
そんな時間が、時の流れとともに喪われて久しくなりました。
今では機械挽きによる抹茶での茶事が当たり前になり、待つということで時間を共有することも、もてなしの一つであり喜びであったかつての記憶も遠くなってしまいました。




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余計な摩擦熱が発生しない石臼で挽くと、緑色はより自然で鮮やかな緑に、香りはより本来の香りがでるのだという事ですが、それにしても、この緑の鮮やかなこと!そして鼻腔をくすぐるお茶の香りの瑞々しいこと!

用意して下さった七尾名物の大豆飴(まめあめ)に、挽いたばかりのお抹茶をたっぷりかけて頂きました。
大豆飴の素朴な甘さと、お抹茶のほろ苦さが口の中で緩やかにほどけていきます。
やさしく、そしてどこか懐かしい味わいになぜかほっとするひと時です。
そして挽きたてのお抹茶でお薄を一服。
話に興じているうち、もう一服いかがですか、というお言葉に甘え二服目を頂いていると、お客様が・・・

と言っても観光客ではありません。
どうやらお仕事関係のお客様。
そういえばお店に伺った時も、多分地元のお知り合いと見受けられる方とお茶を飲んでらしたっけ。
地元の人と観光客の区別なくいろんな人が出入りして、お茶を呼ばれては楽しく話をしていく気取らない場所、名付けて「茶の間の観光」。
それが一本杉通り観光の身上なのだそうです。





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歴史の中で育まれてきた生活文化を大切にしながら、静かに熱い「茶の間の観光」を目指す商店街。
見て楽しむだけでなく、人との触れ合いを通して今に息づく豊かな生活文化を体験する街、一本杉通り。
街の人々が毎日の生活を大切にし、それを楽しむことで、街がいきいきと魅力的になるのだという発想。
生活そのものが、価値ある文化なのだと言う誇りと自覚が、観光のための奇をてらう演出を拒み、
毎日の生活の延長としての新しい「観光」を作り出しました。

その結果として「近くの者悦び、遠くの者来る」と論語にある通りの新しい形の観光地が誕生したのだと
北島屋茶屋の御主人は語ってくださいました。

古い街並みに吹く新しい風。
その風は懐かしい風景と、新しい出会いを運んできます。





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一本杉通りの誘惑Ⅱ(高澤ろうそく店 ① ) → http://folli-2.at.webry.info/201004/article_1.html
一本杉通りの誘惑Ⅰ (高澤ろうそく店 ②) →http://folli-2.at.webry.info/201004/article_2.html





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