空気が冷たく青いとき



揺蕩うようなまどろみの中で、小鳥の囀りを聞いたような気がした。
遠くで密やかに鐘が鳴っているようにも思えた。

早暁の薄闇の中で目を凝らし、耳を澄ませてしばし。
聞こえるともない鐘の響きは、微かな気配だけを残して遠くなっていったが、小鳥の囀りは、一羽また一羽と呼び交わしては賑やかになって
そっとカーテンを開いてみれば、まだひんやり青い空気の中で、咲き始めたフランス菊の花群れがそよとも動かず白く浮かんでいた。

鐘の音と聞こえたのは、優しい耳鳴りであったか。
「私の耳は貝の殻・・・」とうたったコクトーの詩にあるのは、遠い潮騒。
今朝、私の耳が聴いたのは凛と澄んだ水晶のような響きだった。



北の花畑.jpg
ハラルド・ソールベリ「北の花畑」(1905年)オスロ国立美術館




やがて薄い紗のように、窓外に青く満ちていた光は、見慣れたいつもの朝の色になる。
西の空には、まだぼんやり白い月が浮かんでいた。

昔の人にとっては昼と夜は別のものであったらしい。
日の出より始まり日没に終わる昼間を人の一日。
日没から日の出にいたる夜間は神の一日。
してみると、あの不思議な鐘の音は神の時間が終わり、人の時間が始まることを知らせる響きであったか。






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この記事へのコメント

Maria
2020年06月10日 09:33
おはようございます!

aostaさんのブログをお読みして
文章の美しさ、繊細な表現などまるで文学作品を
お読みしているような豊かな気持ちになります。
朗読をしておられるので言葉が豊富なのですね。

可愛いボンボンちゃんの記事を読ませていただき、
いかに愛していらしたか・・・。
お顔を見ると賢そうなボンボンちゃん。
お淋しかったでしょうね。

これからも少しずつ読ませていただきますが、
私には本当に敷居の高いブログ。
勉強させていただきますね。
katananke05
2020年06月10日 20:24
静かで いかにも 寒い北国の空気が感じられる 絵ですね〜
花がいっぱい咲いている季節なのに 不思議〜  好きな絵だわ〜

aosta san が お住みのところの朝はなんかとても 清らかな感じがする〜
私のところの朝は、、 窓を開ければ
近くを通る 幹線道路の 車の音、、
(2重窓なので あけねば 静かだよ)

でも 鐘の音で目覚めたローマの朝、、
あれは まさに神の時間が終わり
人の時間が 始まる時 だったのかも、、


長いお休み、、お体は 大丈夫だったのかしら、、 ご主人様も お元気だったのかしら〜
aosta
2020年06月10日 21:24
◇Mariaさん

コメントありがとうございます♪

ボンボンの記事を読んでくださったんですね。実は、私も先日ボンボンが元気だったころの写真を眺めて、ボンボンのことを思い出しておりましたので、偶然とは言えとても嬉しいです。

ボンボンが私たちと一緒に過ごしたかけがえのない時間を思うと、未だ新しいワンちゃんをお迎えする気持ちになれずにおります。また自身の年齢を考えると、新しくワンちゃんをく迎えても、最後まで世話ができるのかという不安もあります。
ずっとマンション暮らしで、子供たちが小学生になって家を建て知人から譲ってもらったのがボンボンでした。最初で最後のワンコと思っています。時間が経って思い出は褪せるどころかますます鮮明になってきたような気持ちです。

書くことが好きなので、ブログといえどおろそかに思えず、日々の日記替わりで、敷居などございません。バリアフリーですからどうぞ気兼ねなくお出かけください(*^^)v
aosta
2020年06月10日 22:12
◇Katanankeさん

コメントありがとうございます。
私がブログをさぼっていても、ときどき偵察に来てくださるおかげで、今回もなんとか再開できたようにおもいます。感謝!

ハラルド・ソールベリはムンクとほぼ同時代の画家のようです。極北の国独特の空気感、色使いによる特異な画風は、必ずしも当時の人々に理解されず、長いこと「忘れられた画家」だったんですって。

画像でははっきりわからないのですが、水彩かしら?
油絵ではこうした静謐感や透明感は表現できないと思います。
「黄昏の画家」と呼ばれることも多いようですが、この「北の花畑」も夜と朝が交代する狭間の時間の、ぼおっと霞むような神秘的な雰囲気に引き込まれてしまいます。
私が眼を覚ました時間は、黄昏でこそありませんが、まさに神の時間と人の時間がつかの間交差するあわいの時間。フランス菊の白い花だけ夢をみるように浮かび上がって、ソールベリの絵そのものでした。また中央に花畑を描き、その奥に白い月が浮かんでいるという構図も大胆で独特ですね!

今年は、御ミサもないあまりにも悲しいイースターでしたね。
全世界が怖れと不安の中で迎えたご復活祭でした。
katananke05
2020年06月11日 10:06
そうでした、、
もうずっと クリスマス イースター信者になってしまった あたくしなので
イースターは いかずば、、と
思っていた矢先でした〜
ごミサは 今も 地区の代表者のみかもですが
横浜は そろそろ 解禁かも、、
ちょっとホームページ見てみます〜
katananke05
2020年06月11日 10:10
今 教会のホームページチェックしてみたら
地区により 曜日別と 時間別になっていました〜 きずかせてくれて ありがとう〜
aosta
2020年06月11日 18:42
◇Katanankeさん

私も大好きだったベネディクト会の修道院が、請願者の減少と高齢化でクローズとなって以来、めっきり足が遠のいてしまいました。

御ミサは、こちらでは先月から再開されました。今回のコロナ・パンデミックでは、皆が一番教会を必要とするときに、教会を奪われたような気がしてとてもショックでした。感染拡大を避けるためには必要なことだったとは思いますが、なんとも言えない気持ちでした。
2020年06月13日 21:46