読む・聴く・見る ゴーリー的世界(電線の鳥 朗読とリコーダーの会第3回)

 松本はお城近く、住宅地のなか一方通行のひっそりとした道筋にある「books 電線の鳥」
古い民家の一室(しかも和室!)を開放して、古書・新刊・を問わず、オーナーが気になる本を並べるその空間には、本好きに限らず不思議といろいろな人々が集まってくる。かく言う私もその一人だ。


ゴーリー ちらし.jpg
今回のコンサートのために
グラフィックデザイナーであるオーナー夫人が作って下さったフライヤー。
白と黒の無彩色の中にインパクトがある黄色。毎回のことながら、永久保存版!


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異世界に迷い込んでしまったような感覚に陥る、黒川さんの作品たち


 エアポケットのようなこの場所で朗読コンサートを開くのはこの9月で3回目。
確か2年前にオープンしたばかりと聞いているが、すでに3回もお声をかけて頂いている。ありがたいことである。
何がきっかけで、タイトルにあるようなゴーリー的朗読コンサートを開催する運びになったのか、オーナーご夫妻と一緒に頭をひねった結果、もしかしたら黒川じょんさんの作品展でゴーリーの話が出たことに端を発しているのではなかろうか、という話になった。
あれれ、話の順番が違ったかしら?作曲家斉藤恒芳氏が、ゴーリーの奇妙な「優雅に叱責する自転車」の挿絵にインパクトを得て作曲したという同名の曲を、夫が演奏している旨をオーナーご夫妻に自慢(?)したことが始まりだったような気もする(笑)

 黒川さんの作品もアメリカの絵本作家、ゴーリーの作品も、ともにモノクロームの不思議で怪しげな絵である。
 敢えて言うならば、ゴーリーの絵に感じられるブラックで乾いたユーモアは黒川作品にはない。
どちらかと言えば、湿度を感じさせるというか、滲み出てくるような不安が黒川さんの持ち味だ。
突き放すゴーリーに対して、黒川氏はむしろ、引きずり込もうとする。あな怖ろしや。

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で。
朗読とリコーダーの話でしたね。
朗読するには、ちと短すぎるゴーリーの絵本に代わり、彼自身が偏愛する怪奇譚を集めたアンソロジー「憑かれた鏡」より、すでに古典としての風格さえ漂わせている「猿の手」を朗読したら、という話になったのであります。
ならば、黒川ジョンさんの作品も一緒に展示させて頂こうと、同氏に打診。快諾をいただきました。感謝!

題して「読む・聴く・見る」ゴーリー的世界!!!

 ここは信州か?と疑いたくなるような日盛りの炎暑も、日が暮れるにつれてどこへやら。
虫の音とともに、涼やかな風が会場を通り抜ける。やっぱり、信州(笑) 

 そして、朗読コンサートの始まり、始まり。
まずはゴーリーのブッラックな絵本、そもそも今回のコンサートのきっかけともなった「優雅に叱責する自転車」の朗読。
私がメインの文章を読み、特別出演の「電線の鳥」オーナー氏に、挿絵の中にこっそりと書き込まれた会話を読んで頂くという趣向。オーナー氏のとぼけた読み方がどんぴしゃり、ツボにはまりました。
当日の急な思い付きに、あ・うんの呼吸でお付き合いくださったオーナー氏に、はただただ感謝!
 続いて今夜の朗読の本命 W.W.ジェイコブズ作「猿の手」の朗読です。自分で言うのも僭越ですが、今回はかなり入り込みました。どこへ?って、物語の中に。
後半のクライマックス。息子可愛さに、気も狂わんばかりの妻と、恐怖に慄く夫のせりふに、息つく間もなく二役を独りで行ったり来たり。
かくしてアドレナリンはマックスに。
今回もオーナー氏、特殊効果担当で大活躍。ありがとうございました。


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 さて休憩をはさんで第二部は、一転リコーダー演奏。
今回は紀元前ギリシャ時代の文字譜で記された曲から、ルネサンス、初期バロック、後期バロックと続いてロマン派までの、いわゆる「西洋音楽」の変遷。かなりマニアックなプログラムは、夫の構成。
「猿の手」的な音楽を、とオーナー氏に言われ、私が思いついたのはフランスの作曲家、マラン・マレの『 聖ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘の音』。そして同じくフランスの作曲家シャルル・アルカンの『海辺の狂女の歌』の2曲だけだったのだけれど、出来上がったプログラムを見ればマレはバロックに、アルカンはロマン派にと時系列に構成されたプログラムの中にぴたりと納まっていた。
どちらも不安を煽るような不思議なリズムと旋律で、「猿の手」の奇妙で恐ろしい余韻をさらに増幅させるものとなったのではなかろうか。

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 2時間近いコンサートの間、しわぶきひとつ立てずに聴き入ってくださったお客様には、ただただ感謝。
そしてコンサートの後も本や音楽の話で盛り上がり、皆でオーナー夫人の気遣いによる夜食のおにぎりまで頂戴し、家にたどり着いたら夜中も1時を回っていましたとさ。



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この記事へのコメント

電線の鳥
2019年09月10日 09:59
素晴らしい朗読に感謝です。ゴーリーのあの短い文章も言葉を堪能できてよかったし、猿の手の息をのむような展開!!声、言葉、そしてリコーダーの不安げな旋律に酔いしれました。ありがとうございました。
2019年09月10日 10:47
◇電線の鳥さま

その節はお世話になりました。「猿の手」怖いですよね。朗読している方も、展開がわかっているのに、ドキドキしながら読みました。
ご主人様の効果音もよかったです(^^♪
終わった後のおしゃべりが楽しくて、ついつい話し込んでしまいましたが、おにぎり、美味しくいただきました。いつもながらのお気遣いに感謝!