消えがてのうた part 2

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zoom RSS 怖いおはなし 後日談

<<   作成日時 : 2018/02/28 06:24   >>

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今回の朗読コンサートで読んだ半村良の「能登怪異譚」。

能登は作家の母方のルーツであり、彼自身も小学生の一時期を、疎開先として過ごした土地であるという。
その地方に言い伝えられた伝承を下敷きにしたものなのか、はたまた創作なのかはわからないが、
彼一流のひねりを効かせた語り口は、どれもみなざわざわと背筋が冷たくなるような、
夢とも現実ともつかない幻想性に満ちている。
孤絶した山村の、閉塞的な共同体に潜む怪異。決して口にしてはならない因習。
そこには闇の力といも言うべき求心力がある。
すべてが白日の下に晒された現在の生活の中では、決してたどり着くことができない悪夢。
漆黒の闇は、物語を生み出す揺籃でもあった。


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谷崎純一郎の『陰翳礼讃』には、生活の中の陰翳こそが日本人の美意識や感性を育んだとある。
陰翳に触発され、陰翳の中で息づいてきた感性・・・
かつては日常の中に当たり前のようにあった暗闇。
例えば、ぴたりとふすまを閉ざされた押し入れの中の、凝ったような闇。
かつて御不浄と呼ばれた場所に、ぽっかりと空いた底なしの暗い穴。
そればかりではない。
陽が落ちたあとにわだかまる闇の中には、目には見えぬ恐怖、見てはならない存在が息を潜めていた。

「能登怪異譚」で語られる物語の、言葉では説明のつかない不気味で異様な恐ろしさは、
古い京言葉の気配が残る能登方言の、おっとりとしたテンポの語り口で倍加する。
本来が話し言葉である方言は、活字を目で読むより、耳で聴いた方がわかりやすいのではないだろうか。
ならばとばかり、身の程もわきまえず、未経験の能登弁にあえて挑戦してみたくなった。

きっかけは、同じ怪異譚に収録されている『箪笥』を伊藤まさ子さんの朗読で聴いたことにある。
長い間、演劇に関わっていらしたという伊藤さんの朗読には、超ド級とも言える迫力があった。
整合性などひとかけらもない不可思議な出来事の、理解を超えた不気味さ、怖ろしさ。
自分だけ、見知らぬ場所に置いてけぼりをくらったような不安。
方言だからこそ伝わってくる登場人物の喘ぐような息遣いや、湿度の感覚は、標準語には望むべくもない。
以来、「能登怪異譚」に対する好奇心がむくむくと大きくなって、今回、朗読コンサートの運びとなった。



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「怖くて怖くて。もう私ダメです。トラウマになりそう・・・」

そんな感想を伺ったときは、作品の選択を間違えたか、という思いが一瞬頭をよぎったけれど
「あら、それは成功した、ってことなんじゃない?」と言ってくださった別のお客様の言葉に励まされた。
「怖さ」に対する耐性が人によって異なるのは、仕方がないこと。
そもそもが、今回の会場サンロクカフェのオーナーさんの「怖〜い〜お話を」という、リクエストに基づいて選んだ物語である。
「怖すぎて・・・」と言われたら冥利に尽きる、ということにしておこう。



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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
能登弁は 京言葉に似たイントネーションなのでしょうか、、

子供なら おそろしくて 聞きたくないでしょうが
しっかり大人になった わたくし、、
大丈夫 夜におもらししないからね〜
聞いてみたいなあ〜
katananke05
2018/03/01 17:20
◇katanankeさん

コメントありがとうございます。
能登弁は私も初めてなのですが、能登地方は日本海に大きく突き出した地理的条件により、古くから日本海の交通の要所として、経済や文化の交差点として発展しました。
石川県では金沢、加賀南部、能登で標能登方言は京阪式アクセントが主流。
かなり関西色が強くなる石川県の方言は、北国街道に沿って伝わった京言葉の影響を受けたと言われています。
一方の能登は、陸路では行き来しにくい奥地なので、様々な地域との交易が容易であった加賀より、言葉に関西色が残っているのだそうです。
また北前船の交易拠点でもあったことから、能登は東北との交流も密であり、東北方言に似た無アクセントも見られるのだとか。
陸路としての北国街道、海路としての北前船。その交差する場所に位置する石川能登地方は、言葉が交差する場所でもあったのですね!
思えば加賀百万石の栄華には、京文化の雅が色濃く漂っています。

怖いものみたさ、ってありますよね。
怖いお話は、自分で読むより、聴くに限ります(笑)
aosta
2018/03/01 22:13
人一倍怖がりの癖に、怖い話が大好きです。
中国の怪異譚も面白いし、イギリスの怪談も日本に近い湿度がありますね。
aostaさんの語る怪談を聞いてみたいような聞きたくないような…(笑)
Yoko
2018/03/05 13:07
盛会裏に終へられ何よりでした、バーボンのロックを飲みながらとは、何ともオシャレなコンサートデスネ(^。^)

2018/03/05 13:09
◇Yokoさん

コメントありがとうございます。
中国の怪異譚と言えば「聊斎志異」くらいしか思い浮かばないのですが、実は私、この「聊斎志異」も読んだことがありません。しいて言うならば、岡本綺堂の作品で中国を舞台にした短編くらいでしょうか。その綺堂にしても、何かぼ帷幕とした恐ろしさ、とでも言ったらいいのかしら。いわゆる日本の怪談、怪異譚とは一味違う奇妙な肌触りを感じます。
イギリスは、元来が幽霊好きな国民性もあることですし(幽霊が出ると言われる邸宅などプレミアム価格と聞いています・笑)ゴシックホラーなど、面白いものがありそうですね。私のお気に入りはスーザン・ヒルの「黒衣の女」。読み返せば読み返すほど、何やら理由はわからねど、ざわざわと恐ろしくなるお話です。
また機会がございましたら、ぜひ朗読会に足をお運びくださいませ。
怪談は読むより、聴いた方が絶対に怖いと思います。怖いお話かどうかはさておき、東京方面でやらせていただくことがありましたら、またお知らせしますね!
aosta
2018/03/05 15:32
◇薫さん

コメントありがとうございます。

>バーボンのロックを飲みながら・・・

後半のリコーダーで・コンサートで・ジャジーな曲を演奏させていただきました。
ジャズにはバーボン!という主人の都合の良い思い込みで、演奏の途中でバーボンのグラスを傾けながらの演奏となりました(;^ω^)

私はと言えば、客席でこっそりワイングラスを空にしておりました。
どっちもどっち、でしょうかね(笑)
aosta
2018/03/05 15:37
國學院大学で開催された「岡本太郎」の展示の中でもこの国の闇の世界を感じました。
そして自分のDNAの中にもその闇を引き継いでいると感じました。

2018/03/06 07:21
◇ 萩さま

初めまして。ご訪問ありがとうございます。
岡本太郎と言えば、それまで過小評価されていた縄文表現の芸術的な高さをの知らしめたことでも知られていますね。日本という国の始まりの始まりともいうべき、縄文時代における闇の濃さは尋常ではない濃度であったのではないでしょうか。
暖かく、湿り気を帯びた太古の闇こそが命を生み出し豊饒な闇こそが、物語が育まれた場所でもあったのだと思います。そしてそれは確かに、今の私たちにも引き継がれていることを私も実感するところです。
aosta
2018/03/06 21:04
本当に濃密な世界を現した展示でした。 日本の「昔」は底知れてれない闇を抱ているように感じます。 死も日常のことだった。生きるために他の生物を喰らわなければ生きていけない。生と死の狭間に自分の存在がある日常。...

2018/03/07 21:29
◇萩さま

常に夜(闇)であるという常世は、結界によって現世と隔てられているのでしたか。底知れぬ闇は常世へと通じる道でもあったのでしょう。
展示の内容を存じませんので、的外れな感想かもしれませんが、生と死の狭間を自由に行き来する異形の者たちの存在は、自らの住処とした闇が駆逐されてゆくにつれ、私たちの意識からも遠ざかっていってしまったのかもしれないと思います。生と死が相反するものではなく、表裏一体の関係にあるという意識もまた、それらと一緒に蓋をされてしまったのかしら。思えば、私たちの身体もまた、一皮めくれば底のない闇。闇から生まれ、闇に還ってゆくものは、必ずしも魑魅魍魎ばかりではなさそうです。
aosta
2018/03/08 11:22
こわ〜い話、大好きです!
aostaさん、いや、葡萄さんの語りを是非聞いてみたいです。
子供頃は部屋の隅や、暗がり、トイレなどが嫌いでしたが、もうこの歳になると怖いものはめったに無くなりました。
はるの母
2018/03/15 21:25
◇はるの母さん

先日はお目にかかれず残念でした。
怖い話、子供は好きですよね〜。どんなに怖い話(非日常)を聞いても、帰って行く日常があるということを何度も何度も再体験することで、自分の居場所を確認しているのかもしれません。
「もうこの歳になると怖いものはめったに無くなりました。」ですって?
甘い、甘い(笑) 大人になったからこそわかる「怖いお話」もあるんですよ!
aosta
2018/03/17 23:16
気持ち玉を有難うございました。「怖いもの見たさ」で、なんだかすごく面白そうですね。 怪談って夏場じゃなくてもアリでしたか! 朗読とリコーダーのコラボは合いそうですね。
ぬえ
2018/03/19 11:11
ひえ〜!
はるの母
2018/03/19 19:04
◇ぬえさん

久しぶりの気落ち玉に気づいていただき、ありがとうございました。
今回は「冬に怖いお話を聞かせて!」というリクエストをいただいて実現しました。私も怖い話は夏、という思い込みが強かったのですが、好きな方はいつでも聞きたいということらしいのです。
朗読もリコーダーも呼吸が基本。リコーダーと声には共通する響きがあるように感じていますし、ヴォリューム的にも親和性があるように思います(^^♪
aosta
2018/03/19 20:17
◇はるの母さん

年を重ねるにつれて、「怖いもの」の質が変わってきました。
子供のころは「知らないから怖い」という感じだったことが、「知っているからこそ怖い」」に。
aosta
2018/03/19 20:20

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