鯵骨騒動顛末 完結編




さて私が一人図書館で本を読んでいた間、夫はどのような状況であったのだろうか。
以下は彼から聞いた話である。



やっと名前を呼ばれ診察室に入ったのは、受付を済ませてとうに2時間は過ぎた頃であったという。
まずは内視鏡による検査だ。
どうやらアジの骨めは喉の左奥に刺さっているらしい。
普通ならば、ここで左鼻腔から内視鏡を挿入し、骨の除去となるところだが・・・・
夫の鼻腔は曲線を描いて湾曲していることが判明。
湾曲した鼻腔内で内視鏡を使う事は難しいとの判断から、止む無し、右側鼻腔からの処置となった。
左側に刺さった骨を右鼻腔経由で抜き取る。これまた厄介なことである。
処置するにあたり麻酔が施される。鼻腔内の麻酔に加え、口腔内にもゼリー状の麻酔薬。
二重苦である。
推察するに、人並み外れて反射の強い夫は息も絶え絶えの状態であったのではなかろうか。


そろそろ麻酔も効いてきたかと思われる頃、処置が開始された。
先生が内視鏡で確認しながら指示を出す。
その指示に従って看護師さんが鉗子を操作する。
「押して!」 先生の一声で鉗子が開き、「引いて!」で鉗子が閉じる。手際のよい連携プレーであるが、
口を大きく開けたまま、ただひたすら処置が終わることを祈る夫は、そのまま「まな板の上の鯉」であった。
看護師さんを叱咤する号令は、しかし的確で、処置はものの1分ほどで完了したという。
本人にしてみれば、長すぎる1分間であったようだが、餅は餅屋。さすが手慣れたものである。
ところで問題の獲物であるが・・・
目視できた部分は3㎜ほどであったというが、抜いてみれば、なんと2㎝近い大物であった。
これでは、御飯丸呑みなどで抜けようはずもない。
いやむしろ、何度か試みた丸呑みで、より深く入り込んだのかも知れぬ。
祖父母伝来の「御飯丸呑み」は、百害あって一利なし、という結果とあいなった。



画像






一方の私はと言えば。
短いエッセイ、短篇集など、それなりに読書を楽しんではいたが、どうにも落ち着かない。
携帯ばかり手にしては、メールが入ってはいないかと確かめること10回近く。
やっと待ちかねていたメールが入り、いそいそと迎えに行く。
とうに2時を回り、空腹もピークを過ぎていたとはいえ、半分はランチが目的で送り迎えを申し出たようなもの。
この時間なら待たずに食事ができるはず、という私の目論見は、術後1時間は飲食まかりならぬとのお達しの前に、あえなく潰えた。
麻酔もまだ効いている。骨を抜いたところからはまだ出血もある。当然といえば当然の話ではある。
「もう一度図書館へ行って時間を見計らい、改めて出直そう。」という夫の話に依存があろうはずはない。
かくして再び図書館へ。いったん読書に身を投ずれば、1時間などあっという間である。
まだ若干の痛みは残っていたようだが、すでに邪魔者が撤去されたという安堵感からか、夫の食欲は盛んであった。


さて問題の手術代である。
件のアジの干物は一匹180円前後だったかと記憶しているが、病院からの領収書には
10,700円と記載されていた。
180円のアジの骨に10,700円。手痛い出費であった。




           ★鯵骨騒動顛末 → http://folli-2.at.webry.info/201510/article_6.html





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この記事へのコメント

2015年10月29日 16:00
その後の会話編

aosta「さて、夕食は何にしようかしら。お豆腐があったわね。」
Papalin「それには骨ないよね?」
 
2015年10月29日 22:10
なにはともあれ、、、良かったですね。ほっ。
HT
2015年10月29日 22:30
こんばんは。
先ずは抜けたようで良かったですね。そんなに深く刺さってしまっていたのですねぇ。ご飯食べればとか言いますが、それでは逆効果ですよね。手術代凄い金額ですねぇ。よくわかっていませんが3割負担でその金額ですか?。総額では凄い額なのですねぇ。
その後食欲もあって良かったですね。
katananke05
2015年10月29日 22:37
はあ~
麻酔を2カ所にもするから 大手術だわね、、
1万円以上するんだ!
それにしても2せんちのほね、、
P市わからんかったんやね~
ご飯も おかずも これから よく カミカミ しましょうね~
2015年10月30日 18:16
ご主人、いろんな意味でホントに痛い目に遭われちゃいましたね。お大事に 
フェンリル
2015年10月30日 21:27
喉の骨!大変でしたね。困難な事態にも関わらず、ウィットにとんだ文章なのでクスリとしてしまいました。すみません。
なにはともあれ、今日の魔法屋さんでのコンサート!もう素晴らしくて、今だ余韻に浸っております。いつものパパリン様とのリコーダーと朗読のライブは、それはもう申し上げるまでもなくいつも感動しておりますが、この度の歌とリュートと朗読の組み合わせも珠玉のライブでしたね!
御自作の詩の朗読。初めて聴かせていただきましたが、頭の中に次々と浮かび上がってくる色とりどりの映像を追いかけてゆく心地良さ。
実はコンサートの後、葡萄様の詩についてお話ししたいことがたくさんありましたが、思い溢れてなかなか感想をお伝えできませんでした。
さっそく家でフーケの水妖記を見直してウンディーネがブロンドだと知りましたが、もう私の中では勝手に黒髪になっております(笑)。
それからいばら姫の感情のほとばしり!いばら姫は決して待っているだけの女性ではなかったのですね。たまたま先日観たマイヤ・プリセツカヤのバレエ、プロコフィエフのロミオとジュリエットの一場面で、プリセツカヤの踊るジュリエットの場面が浮かんでおりました。そのジュリエットはおしとやかだけではなく、抑えられない感情の激しさが感じられる踊りです。葡萄様のいばら姫は私にとってそんなイメージでした。
長くなってしまうのでそろそろ失礼いたしますが、これからのご活躍にぜひとも御自作の詩の朗読をしていただきたく思いました。
今日のコンサートは時間を超越して、ラファイエット婦人か誰かのサロンにでも来ているような錯覚を覚えました。目の端をジョルジュ・サンドでも歩いているのが見えるような(笑)。
お気に入りの一枚の絵のような素敵なコンサートを、本当にありがとうございました!!!
2015年10月31日 16:16
大変でしたね! 心よりお見舞いを申し上げます。 本番前日の手術でいらっしゃいましたが良くなられて本当に良かったですね。それにしても2センチの骨なんてあったんですね、アジに。 どうぞこれからもお大事に。
2015年11月01日 10:38
◇Papalin殿

>「それには骨ないよね?」

はい、ここ数日、骨のない食材をと心掛けておりますゆえ、ご安心のほど。
そういえば、生協の商品でも、骨なしアジの開き、とかサバの西京漬けといったものが目に付きます。魚離れをしているお子様向けの商品だとばかり思っていましたが、これからは要チェックですね(^^ゞ
最初から骨が抜いてあれば、お子さまに限らず、高齢のかたも安心して召しあがれます。案外ヒット商品なのかもしれません。
2015年11月01日 10:42
◇achisiさん

コメントありがとうございます。
御心配おかけしました。小さなアジの開きに2センチの骨が隠れていたのはびっくりでしたが、なにはともあれ、一件落着(笑)
achisiさんもお魚を召し上がる時はくれぐれもご注意ください(^^ゞ
2015年11月01日 10:54
◇HTさん

>3割負担でその金額ですか?

はい。内訳は、検査代が6020円、手術代が29960円に特別初診料が加わって、上記の金額と相成りました。骨を抜くだけ、と簡単に考えがちですが、咽頭異物摘出術ということで立派な(笑)手術だそうです。喉の奥深くに刺さった骨、わずか3ミリを手掛かりに内視鏡で確認しながら摘出するわけで、喉を傷つけないよう神経を使うのでしょうね。
2015年11月01日 11:02
◇katanankeさん

>1万円以上するんだ!

そうなんです。特売のアジの干物で、1万円の出費(/_;
抜いてびっくり!2㎝もあったとは本人も想像していなかったようです。
何しろ痛みで目が覚めるくらいですから、相当深く刺さっていたのでしょうね。病院に行く前は、意気消沈していたPですが、術後はいたって元気です。
ご心配ありがとうございました(^v^)
2015年11月01日 11:14
◇mintさん

>いろんな意味でホントに痛い目に遭われちゃいましたね

刺さった骨が喉を刺激する痛み、麻酔時の苦しみ、加えてお財布も痛い!1万円あったら、どこかで豪勢なお食事ができたはず、と思うと残念でしかたありません(笑)
たかがアジの骨と、侮れないことを痛感いたしました。
そういえば、友人がマンボウのお寿司を食べたそうです。マンボウってあのマンボウ。mintさんはマンボウ食べたことおありですか?あまり骨はなさそうですが。
2015年11月01日 15:48
◇フェンリルさん

コメントありがとうございました。
嬉しくて何度も何度も読み返してしまいました(^^ゞ
アジの骨騒動につきましては、無事決着をみることができました。
P氏の苦しみをネタに(笑)をとろうという今回の目論見に、ご協力いただき、ありがとうございました。彼の事を笑うというのではなく、真面目なことをちょっと斜に構えてコミカルに書いてみたいという欲求がむらむらと湧いてきて抗しきれなかったのです。笑っていただけたとするならば、それは大成功というわけです。

一昨日はコンサートにお越しくださいまして本当にありがとうございます。
フェンリルさんには何回もコンサートにお出かけいただき、我が家ではフェンリル家の方向に足を向けて眠ることができなくなりました。
今回は、中世・ルネサンス歌曲とのコラボということで、朗読する詩を選ぶに当たっては、かなり時代を意識しました。いうなれば音楽の時代と自然に溶け込んでゆく詩とでも申しましょうか。ダウランドの歌曲の歌詞を文語まじりで意訳したのも、時代の移り香のようなものを言葉で感じてほしいという気持ちがあったからでした。

オンディーヌ(ウンディーネ)の詩は、原さんのほうから、「ここは官能的な詩で」というリクエストをいただいて選んだものです。およそ「官能」とは縁遠い私ですが、粘液質の官能ではなく、清らかな水の流れのような清潔な官能を感じていただけたならとても嬉しいです。その意味では「真珠」はより官能的であるかと思います。
2015年11月01日 15:49
◇フェンリルさん

続きです。

そうでしたか、フーケの「水妖記」ではウンディーネはブロンドでしたか(笑)
原さんが歌われた「黒髪」が素晴らしくって、私も黒髪の印象が強く刻印されてしまったようです。「ロミオとジュリエット」プリセツカヤでご覧になったなんて、まあ、うらやましい!! 疾走するようにロミオを愛した三日間、確かにジュリエットは、ほとばしるような愛と共に、愛に殉じたのだと思います。私の「いばら姫異説」では、いばら姫は愛を求めながら殉ずることができません。いばら姫にとって、眠りは愛の妨げであると同時に慰めでもあるのです。
ラファイエット夫人やジョルジュ・サンドに至る連想、さすがはフェンリルさん!
私はコンスタンの「アドルフ」でフランス心理小説を知りました。恋の喜びや愛の成就と言うより、その残酷さ苦しみは「悲しみよ とどまれ」にも通じる心理かと思います。
コンサートの記事はまた改めてアップしようと思っておりますので、またお付き合いいただければ嬉しいです
2015年11月01日 16:09
◇Keikoさん

お見舞い、ありがとうございました。
今回の「本番」がP氏のコンサートではなったことがせめてもの救いでありました(^^ゞ 当初はあまり関心がなさそうでしたが、内心、心配していてくれたようです。前日まで「僕は行かない」と言っておりましたのに、夜になったら
P氏「やっぱり行ったほうがいいかな。」
私 「あら、それなら来て!!」
P氏「最初からそういえばいいのに。」
私 「 ^^; 」

ありがたい親心に感謝(^v^)

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