すみれの花咲くころ






5月になって、庭のあちらこちらでスミレの花が咲き始めました。

自生のスミレもあれば、こぼれ種で増えたヴィオラもありますが、緑の下草一面、こぼれた星のように、小さなスミレの花が咲いている風景を見ていると、気持ちまで優しくなるようです。






オイオオタチツボスミレ "Viola kusanoana × V.obutusa"
オオタチツボスミレとニオイタチツボスミレの自然雑種
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                  菫(すみれ)     国木田独歩


             春の霞に誘はれて
             
             おぼつかなくも咲き出でし
             
             菫の花よ心あらば
             
             たゞよそながら告げよかし
             
             汝(な)れがやさしき色めでて
             
             摘みてかざして帰りにし
             
             少女(をとめ)よ今日も来たりなば
             
             「君をば戀ふる人あり」と。


                                -独歩吟-







この詩の中に出てくるスミレはどんなスミレだったのかしら。
思いを寄せている少女が、野辺のスミレを摘む姿を見て、恋心を告げることができない青年は、すみれに自分の思いを言づける・・・・優しく切ない恋の歌です。


春霞のように儚く純情な恋心を詠った独歩の「菫」は、つつましく純粋な恋の目覚めをすみれに重ねた、初々しい歌です。やるせない思いを抱きながら歩む青年の目に、足元で人知れず花を咲かせている小さな菫の花は、少女そのひとを見たのかもしれません。
スミレの花に寄せて吐露した切ない思い・・・・
ひっそりと野に咲くすみれ、俯いて咲くその花姿を眺めていると、なぜか人恋しい思いが深くなります。


「君をば戀ふる人あり」と

スミレの花は、彼の思いを少女に伝えることができたのかしら。










(多分) ニョイスミレ(如意菫) Viola vevecunda"

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             「春の野に 菫摘みにと 来し吾ぞ  野をなつかしみ 一夜 宿(ね)にける」

                                            山部赤人万葉集(8-1424)   





我が家の庭の隅っこで、毎年星屑のような花をつける小さな小さなスミレ。
多分ニョイスミレだと思うのですが、自然雑種の多いスミレの花は特定するのが難しくて、
(多分)のおまけつきとなりました(^-^;

山部赤人のスミレの歌はこのニョイスミレを詠ったものとも言われています。







パンジーのような華やかさとは無縁の野のスミレたちは、人知れずひっそりと花をつけ、種を結びます。
声高に愛でられることもなく、誰かが見ていようと、見ていまいと、自分の命をまっとうする花。
かのナポレオンもスミレの花を愛していたという話は意外でした。

ショセフィーヌとの結婚記念日には、必ずスミレの花束を 贈っていたというナポレオン。
1814年エルバ島に流されることが決まった彼は、「余は春になったらスミレを手にして 再び戻る。」という言葉を残して、パリを去りました。翌年3月、言葉通りエルバ島脱出に成功して再びパリに戻ったナポレオンを、市民たちはスミレの花をかざして迎えたそうです。
その後ワーテルローの戦いに敗れたナポレオンは南大西洋の孤島セント・ヘレナへに幽閉され、1821年5月5日 、その生涯を終えました。彼が肌身離さず身に着けていたロケットには、ジョセフィーヌの髪と、干からびたスミレの花が入っていたと言うことです。

オーストリア皇帝フランツ1世の娘マリー・テレーズとの婚姻によって、ナポレオンから遠ざけられたジョセフィーヌは、薔薇を愛し、薔薇の育種と保護に情熱を燃やしたことで知られていますが、いっぽうのナポレオンが愛した花がスミレであったという事実に、私はなぜか心動かされるのです。








さて、かつてはスミレの宝庫とまで言われた八ヶ岳山麓・諏訪地方ですが、年々自生のスミレは減っているようです。

我が家の庭で咲くスミレの花は、どれもありふれたものですが、ひとつひとつの花のつつましやかな美しさは、見飽きることがありません






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この記事へのコメント

HT
2015年05月16日 10:16
おはようございます。
庭の隅っこに可愛く毎年咲いているなんて素敵ですねぇ。私の家には咲いていませんが、一軒置いた隣の駐車場に可愛く咲いています。そんなにパッとしたお花ではないですが、綺麗なゴテゴテしたお花よりは好きです。ナポレオンのお話、なんだかぐっと胸に来ました。そんなにもスミレを愛して、私には今何もないなぁーって…。
ぶんな
2015年05月16日 20:01
赤人よりも独歩のほうが空気も花も爽やかに息づくという感じがします。
ナポレオンはスミレが好きだったとは! ことしのいま花壇で目を掛けられているのは、エニシダの花。パーっと黄色い花火のように明るく咲いています。
ニョイスミレ、これが咲くたびに、10年も前にこちらの高名なエッセイストの方に花の名前を教えていただいた事を思い出します。あれからもう庭じゅうに増え広がりました。とてもきれいです。無意識のうちに保護してきた結果です。
こちらのブログも花が続いていますが、春先からこの時期までの開花リレーは、ほんとうにすばらしいですね。すばらしいということばを使わずに詳しく説明することが随筆などでは必要と知りつつ、つい使ってしまいます。
2015年05月16日 21:41
母も大好きだったスミレですが、実は私も好きな花のひとつです。 しかも私、高校生の頃は高1=菊組、高2=菫組、高3=藤組って言う組名の高校に通っていました。^_^;
2015年05月17日 05:27
◇HTさん

おはようございます。
ニョイスミレは花も小さく地味な印象ですが、毎年雨落ちの砂利の上でひっそりと咲いています。私も、駐車場の花が気になるとおっしゃるHTさんと同じように、この可憐な花が大好きです。
ジョセフィーヌはナポレオンの最初の妻でしたが、ナポレオンがオーストリ皇女マリー・ルイーズと再婚してからも、二人の間の信頼関係は損なわれず、ナポレオンが失脚し、マリー・ルイーズ始め、側近さえも見限った彼を最後まで支えました。
ナポレオンに先立って亡くなったジョセフイーヌは臨終の際、彼を名前をつぶやいたそうです。ナポレオン自身も、死の床で彼女の名前を呼んだとか。
ナポレオンとスミレ、そしてジョセフィーヌ、胸に残るエピソードですね。
2015年05月17日 05:53
◇ぶんなさん

コメントありがとうございます。

この国木田独歩がスミレを詠った詩は、抒情的で美しいだけでなく、その純情が胸を打ちますね。可憐なスミレの花と健やかな少女のイメージが重なり、さらに清々しくもほろ苦い、人生の春を思い出させてくれるような、忘れがたい佳品だと思います。

ぶんなさんのお庭では、エニシダが満開なんですね。
5月の光を跳ね返すような眩しい金色の花、私も大好きです。庭に咲かせたいのですが標高が関係しているのか、うちの庭では育たず、とても残念です。

>すばらしいということばを使わずに詳しく説明することが随筆などでは必要と知り つつ、つい使ってしまいます

美しい、素晴らしい、夢のようだ・・・・等々、ほかの言葉で表現するのは、本当に難しいですね。特に詩を書こうとするときは、避けては通れない難関だと思います。
それしかないと思う言葉、表現は、なかなか見つかりません(/ω\)
2015年05月17日 06:28
◇mintさん

>高校生の頃は高1=菊組、高2=菫組、高3=藤組

なんとなく私立のお嬢様学校という連想をしてしまいましたよ(^^♪
いいですね、菫組!
高校ではなく幼稚園で申し訳ありませんが、私や私の子供たちが通った幼稚園で、私はばら組、長男は藤組、長女は私と同じ、ばら組でした。
もちろん菊組、すみれ組、さくら組もありました。その後園児が増えて、ばら組は、白ばらと紅ばらのふたつになったようですが、現在はまた子供が少ないからどうなっているでしょうね。当時のシスターが90歳を超えてまだお元気です。さすがに今は幼稚園から離れて修道院にいらっしゃいますが、親子二代にわたってお世話になった懐かしい方です♪
カタナンケ
2015年05月18日 10:30
あれえ~
私が すみれにまつわり 母の思い出をかいたのは
のってないよん、、
どうまちがったかな、、

お母様の事をかかれているのがおおくて
私も思い出したのですが
母は台所でよく 宝塚の校歌?の
「すみれの花 咲~ク~頃」を歌っていましたよ、、
おかげで わたしも 序章の「春 すみれ~咲き~ 春を つげ~る」
から 歌えますよ、、
性格はにていない 母ですが
読書好きとか 活発とかいうところは
いまさらながらに 母似だわ、、と
年がちかくなったせいか このごろよく おもいだしますよ~
2015年05月19日 06:03
◇カタナンケさん

おはようございます。

カタネンケさんがお母様との素敵な思い出を書いてくださったのは、一つ前のブログ「スミレの思い出」でした♪ 
二回続けてスミレのブログを書きましたので、混乱させてしまいましたね。
お返事も書かせていただきましたので、ご覧くださいな。

カタナンケさんもお母様似なんですね。
私も、本が好きなところ、絵が好きなところ、おしゃべりが好きなところ(笑)、・・・・など母にそっくりだと自分でも思います。
子供の頃母と一緒にいる時間が長かった分、影響も大きいのでしょう。
同じように娘も私にそっくりです。
娘と本の話や映画の話ができるのが、うれしいです。
もっとも似ているのは感性や興味の部分で性格的にはちっと違いますが。
カタナンケ
2015年05月19日 23:45
あれえ~すみれの話は2題あったのね、、
中身がちがうのに すみれ、、と ながして mintさんの
おかあさまのはなしとかで すっかり 合点してしまい、、
我ながら恐ろしいわ~

それにしても3色すみれは 顔がこわい、、
なるほど、、 継母の顔?
シンデレラの昔から 継母は良いイメージでなくて かわいそう~
2015年05月20日 06:03
◇カタネンケさん

おはようございます。

>あれえ~すみれの話は2題あったのね

すみません。同じようなタイトルで混乱させてしまいました(^-^;
私たちが目にするパンジーは、ヴィオラ・トリコロールの改良を重ねてできたもののようです。カラフルで花も大きい園芸種に比べるとヴィオラ・トリコロールは可憐で奥ゆかしい花ですが、そう思って見ると、確かに人の顔のようにも見えます。
ひとひねりして、「継母」と名付けた人のセンスって、ある意味すごいかも、しれませんね。シュトルムの「三色すみれ」のように心優しい継母もいるのに、グリムやペローなどの民話や、アンデルセン童話にしても、継母は意地悪ときまっていますもの。
シュトルムが敢えて自分の作品に、この花の名前を付けたところが興味深く深く思えます。

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