メドゥ・スウィート / エリザベス朝のハーブ





雨が続くと、咲くことができないまま朽ちていく花もあれば、雨に勢いを得て咲く花もあります。

7月に入って、メドゥ・スウィートが咲き始めました。
メドゥ・スウィートという響きも美しいこの花は、私のお気に入り。
別名クイーン・オブ・ザ・メドゥ。
強い日差しが苦手で、湿った肥沃な土を好むこの花が、雨の中で煙るように咲いています。

エリザベス1世の時代、優しく甘く香るこの花は、結婚式に際して教会の床にまいたり、
花嫁の冠を編むときに使われました。
エリザベス朝といえば、シェイクスピアが活躍した時代です。
もしかしたら、あのオフィリアも野辺でこの花を摘み、そっと髪に挿したかもしれません。




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        淡いクリーム色のメドゥ・スィートの後ろで咲いている濃いピンク色の花は、同じバラ科の京かのこ。
           英名はJapanese Meadowsweet。本家のメドゥ・スウィートによく似た白い花をつける種類もあります。





ヴィクトリア朝の作家リチャード・ジェフリーズ (R.Jefferies1848年- 1887年)が、こんな風に書いています。



洗礼者ヨハネの祝日
は、花嫁のように白く着飾る。
たおやかな6月の白薔薇、白い星のような花をつけるエルダー、優雅なメドゥ・スウィート。
それからシロツメクサも。
春が青と紫なら、洗礼者ヨハネの祝日は白。秋はこがね色。





薔薇やエルダー、そしてもちろんメドゥ・スウィートもシロツメクサも、優しく香る花。
この時代は、花の姿はもとより、香りが大事にされた時代でもありました。
エリザベス1世は、このメドゥ・スウィートを絶やすことなく私室に飾らせていたそうです。
英国の絶頂期を極めた女王が愛したのは、可憐なハーブの花でした。
なんだか「女王様」のイメージが変わりませんか?

ある時はその優雅な花の形からqueen' feather と呼ばれ、夏が過ぎて花が咲かなくなると summer's farewell とも呼ばれていたメドゥ・スウィートは、その薬効の高さから、古代ドルイド僧が最も神聖視していたハーブでもありました。
湿り気のある土壌を好む植物、という事実もあって、英語で川辺の草地・低地を意味する"meadow"に因んだ名前だとばかり思っていた私ですが、語源的には無関係のようです。
もともとは、古代アングロサクソン族が好んだ "mead" という蜂蜜のお酒の香り付けのために、この花を混ぜたことに由来する、というのが事実なのだとか。
"meadow"と"mead"・・・・
アルファベットの"w"ひとつがあるかないかで、意味するところも響きも、かなり違うような気もいたしますが、
長い年月とともに本来の意味が失われていった、と考えるべきなのかもしれません。

                              参考 加藤憲市 「英米文学 植物民族史 」1984年富山房







閑話休題。

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どこから種が飛んできたのか、まだ蕾のミソハギ Purple loosestrife の群生の中で咲いていたクガイソウ。
この花も湿りけのある木漏れ日の下が大好きです。






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こちらは、まだ元気だった頃のボンボンとよく散歩した、川べりの道から掘り取ってきた草連玉。
草連玉と書いてクサレダマと読みます。レダマに似た草、というような意味だそうです。
本家のレダマはマメ科の植物ですが、八ヶ岳周辺に自生する草連玉はサクラソウ科オカトラノオ属の多年草。

植えてから4年を過ぎて、嬉しいことに、すっかりこの場所が気に行った様子。
草連玉を群生させたいという私の望みが、図らずも実現しました。
朝陽の中で、光を集めるように咲く繊細な花も、輪生する葉が描く曲線も美しい。






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数年前まで、何を植えてもうまく育たなかったこの一角ですが、今では我が家の小さな meadow になりました。
こぼれ種で増えた沢桔梗が薄紫の花を咲かせる日も間近です。










最後に、私のお気に入りをもうひとつ。
1992年初版の「ハーブ図鑑110」。 レスリー・ブレンネス著 槇島みどり訳 日本ヴォーグ社。
現在ではすでに古書でしか手に入らないようですが、非常に良く出来た本です。
図版も豊富でレイアウトも美しいこの本は、さしずめ私のハーブ指南。
英国ナショナルトラスト協会監修というのもうなずけます。

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この記事へのコメント

HT
2014年07月18日 21:52
こんばんは。
綺麗なお花ですねぇ~。このお花に良く似たお花を美ヶ原高原に行く途中で見かけます。多分違うお花だろうとは思いますが、また行ったときに咲いていたら撮ってきて見ますね。
お庭には何処からか飛んできたお花が咲いているのですねぇ~、先日も植えていないのにと言われていましたですよね。私の家の雑草だらけの庭にも植えた覚えのないお花が咲きます。可愛いものですよね。来年も咲いてくれたら嬉しいのですが。
凄く自然のままに近い感じのお庭が素敵ですね。
ぶんな
2014年07月18日 23:06
折々に選ばれて用いられる花があるのですね。演出してくれる花の役割の大きさを思います。ミソハギとてもきれいに撮れていますね。
クサレダマ、私、調べもせずに語感だけで、クサレ・ダマだと思っていました(笑)。これで納得です。
しっぽ
2014年07月19日 00:16
名も知れぬ花々と、私なら一くくりにしてしまうのに、ちゃーんと名前があるのですね。創世記にあるように 人が名前をつけるために主は 全てのものを連れて来たらしいです。てんやわんやであった事でしょう。今は花たちでいっぱいですね。
いいなあ! 

言うまいと思へど羨望口をつき

洗礼者聖ヨハネの聖日っていつでしたか(^^ )カトリックではないので全然覚えられません。花嫁というのはキリストの花嫁とかけているんですね。

2014年07月19日 05:13
◇HTさん

おはようございます。
メドゥ・スウィートに似た花、ありますね。草ではありませんが、ナナカマドの花も雰囲気がそっくりです。シモツケ草も色こそピンクですが、色以外はよく似ています。美ヶ原では、この時期どんな花が咲いているのかしら。
お写真を見せていただくことを楽しみにしています。

どこからか飛んできた種。
クガイソウは多年草なので、一度根付けば毎年同じ場所で花を咲かせてくれます。うまくすれば、その子の種が落ちて、また増えるかもしれません(^^♪

>凄く自然のままに近い感じのお庭が素敵ですね。

ありがとうございます。植物は、気に行った場所でしたらご機嫌よく増えてくれます。
何種類か水を好む植物を植えたところ、それぞれが、てんでに増えて自然な雰囲気の植栽になりました。
2014年07月19日 05:21
◇ぶんなさん

おはようございます。
昨夜からまた雨が降りだし、今朝の庭にはまだ雨が残っています。

>私、調べもせずに語感だけで、クサレ・ダマだと思っていました

実は私も(^-^;
音だけだとやっぱりクサレ・ダマに聞こえてしまいますよね。
寄りにもよってクサレ・ダマとはなんと可愛そうな名前!と思っていたのですが、調べてみたら私の早合点でした。

今年は度の花も、例年に比べ咲くのが早いような気がしています。
先だっての大雪が何か影響しているのかしら。大量の雪で人間は難儀しても、植物にとっては益であることもあるのかもしれませんね。
2014年07月19日 05:50
◇しっぽさん

>ちゃーんと名前があるのですね。

そうなんです。すべてのものには名前がある。神様がアダムに命じたことはその通りになりました。
私は名前がわからないと落ち着かないタイプです。結構しつこく調べます。そして名前がわかると、ひと安心(笑)。
名無しの権兵衛さんのままでは、仲良くなれないのは人も植物も一緒ですね。

>言うまいと思へど羨望口をつき

思わず爆笑(^^♪
私には私の「羨望」もあるんですよ。
ないものねだりはお互い様かしら。

「洗礼者聖ヨハネの祝日」
洗礼者ヨハネはキリストの誕生より6か月早く生まれたとされているので、6月24日ということになるようです。精霊や魔女が出没するという伝説もあるこの夜は物語に似つかわしい。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」も、この夜の物語です。

北欧に行くと、聖ヨハネの日は夏至祭になります。
もともとキリスト教が伝わる前から あったお祭りに、ヨハネが乗っかったという感じ(笑)
夏至祭は大きなたき火をすることで有名ですよね。北欧でもこの晩は神秘的で超自然的な力が働くと考えられていたみたいです。
ヨハネの祝日(夏至祭)に使われる植物には特別な意味と役割があるのでしょう。
2014年07月20日 10:47
メドゥ・スウィートのふわふわした花、好きですね~!と読み進んでいたら今回は細かな花がふわふわと集まって穂になる物ばかり、ステキです!どれもみんな髪に挿してフラを踊りたい!って思わせてくれましたよ。来月末の発表会に向けて家で1人の時にフラの練習をしているんですが、そんな練習の時でも庭に咲いてる花をちょこんと髪に挿してできたら気分もアゲアゲになれるでしょうね。いいな~・・やっぱりお庭に沢山の花が咲き誇っているとそんなことまで想像できて楽しそうですね。St.ヨハネの祝日、静かに過ごしたいと思いながらバタバタしてました ^_^;
2014年07月20日 20:46
◇mintさん

>今回は細かな花がふわふわと集まって穂になる物ばかり

あら!? そうだったかしら、と改めて写真を見てみたら、mintさんがおっしゃる通り、ほんと!「ふわふわと集まって穂になる花」ばかりでした^^;

mintさんもこうした感じの花がお好きなんですね。わたしも「ふわふわ系」に弱くて、気がつけば庭のあちこちで、ふわふわ、ふわふわ(笑)

フラの練習の時、髪に挿したら、やはり気分が違うのでしょね。
普段の生活ではなかなか髪に花を飾るという機会がありません。
フラは踊らないまでも、何かの機会に私も髪に挿してみようかしら?
ANNA
2014年07月22日 19:28
aostaさん、こんばんは。

aostaさんのお庭には、素敵なお花がたくさんですね~
またまたウットリ・・・
メドゥ・スウィート、ひっそりとした風情の可憐なお花ですね。

名前も素敵。エリザベスⅠ世が、私室に絶やさず飾るほど好んでいたお花だなんて。
赤毛のアン、アン・シャーリーが聞いたら「なんて美しい名前なのかしら!」って感激しそうですね。
2014年07月22日 23:19
◇ANNAさん

コメントありがとうございます。
ANNAさん、突然ですが、杏仁豆腐はお好きですか?
メドゥ・スウィートの花を指先でつぶすと、この杏仁の香りがします。
図鑑ではアーモンドの香りがするとありましたが、アーモンドの香りを知らない私は杏仁の香りだと思っています。アマレットというリキュールの香りも杏仁です。
シェイクスピアの時代は、香りの良いハーブを石や木の床に撒いていたそうです。メドゥ・スウィートは乾燥するとさらに香りが良くなるということでエリザベス1世は、この花を飾るだけでなく床にも撒いていたようですよ。
名前の最後に”e”がつく、我らがアン・シャーリーだったら、(エリザベス1世の)「レースの襟飾り」という呼び方をしたかもしれませんね(^^♪
ANNA
2014年07月23日 08:41
aostaさん、おはようございます。

「レースの襟飾り」!!本当、そうですね。アンの口から出てきた言葉みたいだわぁ~
とニンマリしてしまいました。
さすが~aostaさん!
2014年07月25日 07:43
◇ANNAさん
エリザベス1世の肖像画で、特に印象的なのがレースの襟飾りは、「ラフ」または「コルレット」いう名前で呼ばれていたようです。
真鍮の針金で支えられていたこの襟は、とてもかたくて、首を自由に動かすにも不自由なので、食事の時は首を動かさなくてもいいように、柄の長い特製のフォークが使われたんですって。
非常に高価で宝石と同様に扱われていたレース、国家元首としての威光を示すものだったとはいえ、難儀な話ですね。
このメドゥ・スウィートでしたらふわふわと柔らかい襟飾りになったでしょうに(笑)
カタナンケ
2014年07月26日 11:40
このご本をみたら 英語版はあるみたいだけど
ちょっと 、、かな、、

メドウスイートは
京かのこみたいなおはなかしら、、
アスチルベとか、、
どのお花もみんな 好ましいわ~
2014年07月27日 05:49
◇カタナンケさん

おはようございます。
「ハーヴ図鑑110」は説明の丁寧で見やすく、あるととても重宝する本ですが、新刊では手に入らないのがとても残念です。

>メドゥ・スウィートは、京かのこみたいなおはなかしら、、

我が家には赤と白、両方の京かのこがあります。
カタナンケさんがおしゃるように、白花の京かのこの花はメドゥ・スゥートによく似ていますね。どちらもシモツケ草の仲間のようです。
花の時期としては白花京かのこの方が早いので、一緒には咲きません。
メドゥ・スィートと白花京かのこを比べると、メドゥ・スィートの花は、白、というよりクリーム色をしています。
杏仁のような香りは京かのこにはないみたいです。

アスチルベのふわふわした花もいいですね。
こちらはユキノシタ科の花なんですって!ちょっと意外でした(^-^;

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