Cafe プレイエル




先日の「大麦小麦」のコンサートにおいでいただいたお客様のお一人が、翌日お電話を下さいました。
「松本に素敵なお店を知っていますから、ぜひそこでコンサートをやりましょう!」

やりましょう!って言われてもお店の方のご意向も伺わないと・・・・と思っていたところ、
「オーナーがコンサートは2月にお願いしたいと言っています。」」という連絡が入りました。
まだ一度もお目にかかったことのない方からのオファーは初めてです。
まずはご挨拶に伺わなくては、ということで、先日松本まで出かけてまいりました。

お店の名前は「カフェ・プレイエル」
上高地の玄関口にあたる波田町、新島々駅駅舎のお隣にありました。
一見普通のカフェなのに、店内に入ってびっくり。



店内にひっそりと置かれていたのは、ショパンが愛したことで知られる往年の名器、プレイエル。
過ぎていった年月が、このピアノ本来の気品をさらにも磨き上げ、凛と美しい佇まいを与えたのでしょうか。
それは、小ぶりながら、確かな存在感に満ちたピアノでした。

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ニュアンスのある色の躯体に、マットなゴールドのラインが映えるデザイン。
ピアノ製作が今のように機械化される前、職人がひとつひとつの部品を手作りしていた時代、1923年の楽器です。
1923年と言えば、奇しくも関東大震災の年。私たちの祖父母の時代でもあります。
100年近い年月を生き延びたピアノがフランスから日本へ、海を渡ってきた不思議。
さらには山深い信州の地までやってきた不思議を思えば、
時を経てなお、現役の楽器として典雅な音を響かせているという事に感動を覚えます。

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プレイエルだけで驚いてはいられません。
お隣には、何とエラール!こちらはさらに古い1909年の作。
リストが愛したというエラールは、繊細な象嵌細工で飾られた美しいピアノでした。

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通常、ピアノの弦は交差する形で張られているのですが、このエラールは平行に張ってあるのですって。
見ればなるほど、その通り。
つまりはチェンバロと同じ弦の張り方ということになるのかしら。
そしてダンパーも、下から抑えるようになっていて、通常の「上から抑える」形状とは違うようです。

平行弦であること、ダンパーの違い、これはやはり音色に影響するのでしょうか?
またまたPの受け売りではありますが、昔のピアノの弦はスタインウェイやベーゼンドルファーなどの現代楽器にくらべると、弦は短くゆるく張られている、つまりテンションが低いということで、音は柔らかく、丸く響くのだとか。

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そしてさらに、三回目のサプライズ!
カフェに隣接するギャラリーにあったのは、穂高クラヴィーア工房の吉岡弘司さん作のスピネット。
これがまた何とも透明に澄み切った音色で、低音弦が魅力的に響く楽器でした。
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屋根には金箔と銀箔の象嵌。
酸化した銀箔はほとんど黒と見まごうばかりに変色していますが、それこそが作者の意図したところ。
魔よけとしての「黒と金」なのだそうです。
そして槍ヶ岳の形になるようにデザインされた屋根。
今の日本で、弦から自分で作れるのは吉岡さんおひとり、というこだわりの職人さんの作品です。

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定休日にも関わらず、私たちのために店を開けて待っていて下さったオーナーは、上品なご婦人でした。
60過ぎたら、私もあんな風になりたい、と思うような素敵な方です。
最初から初対面とは思えないほど打ち解けて、時間が経つことも忘れたまま、すっかり話しこんでしまいました。
オーナーとの間を取り持って下さったのは、長年の知己であるNさん。
「Nさんが勧めて下さる方の演奏でしたら、間違いはないと思ったのですよ。」
コンサート即決の理由を伺った私たちに笑顔で答えてくださったオーナー。
おふたりのご期待に背かないコンサートにしなくては!


コンサートは来年2月23日(日) 午後2時からと決まりました。
今回は「大麦小麦」と同じく、リコーダーと朗読のコンサートを、とのリクエストをいただきましたが、
プログラム自体はかなり違うものになりそうです。詳細はまた改めてアップいたしますね。
同時に、お許し頂けますならば、ぜひあの素晴らしいスピネットとの共演を果たしたいという想いも熱くなっています♪






カフェ・プレイエル、今月はこんなコンサートが行われるそうです。
お近くの方で興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひお出かけください。

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★武藤哲也リコーダー&オカリナ教室はこちら → http://folli-2.at.webry.info/201503/article_4.html 




この記事へのコメント

カタナンケ
2013年11月03日 21:34
素敵な出会いの輪が 水輪のように しずかに
ひろがっていきますね、、
それにしても きれいな ピアノ、、といっていいのかな、、
ですこと、、 それこそ チェンバロのように
空気に 音を運んでもらうような、、
そんな音色が リコーダーの音色とともに 2月の張りつめた大気の中を ただよっていくのでしょう~
クラシックをあまり しらないわたしなのに
音が想像できるようです、、 不思議、、
耳に聞こえるような気がしますよ~
2013年11月04日 04:06
◇カタナンケさん

水輪のような出会い・・・・
凄く素敵なお言葉をいただき、とても嬉しいです。
そうなんですよ、プレイエルにしても、エラールにしても、本当に美しいピアノたちでした。どちらも、フランスの誇る名器でした。
ショパンはね、「私は気分が優れないときはエラールを弾き、気分の良い時はプレイエルを弾く。」と言っていたそうです。構造的に完成度が高く、すでに完成された音をもっていたエラールと、自らが求め、表現したいと願う音を自らの技量によって引き出すことができるプレイエルと言った意味のようなのですが、ショパンの天才を発見したのもプレイエルの創始者イグナスの息子カミーユであったと聞きました。ピレイエルにせよエラールにせよ、第一次世界大戦前に最盛期を迎えますが、敗戦とともに衰退し、会社もなくなってしまいました。今ではその名を知る人も少ないようです。かわって世界を席巻しているのがスタインウェイに代表される大音量のモダンピアノ。こう聞くと、あたかもヨーロッパ映画とハリウッド映画の興亡をみるようです(笑)
カタナンケ
2013年11月04日 09:49
なるほど、、ピアノの歴史をたどると ヨーロッパとハリウッド映画の
興亡のようだと、、
太陽の輝きや 湿度の重さ、、其処から生み出される 民族の気質、、
それらが すべての物の ベースにあり
すべてを 形つくり 方向性を示し、、
そうかんがえると 私の頭は 単純に 整理され
すっきりするような、、

昔、、フランス映画が好きで シャンソンが好きで、、
そんなときもあったわ~
2013年11月04日 15:39
◇カタナンケさん

フランス映画がお好きと伺い嬉しいです♪
私もハリウド超大作の類よりフランスやイタリアの映画が好きです。
スクリーン全体が、明るく煌煌と照らし出されたような、ハリウッドものに比べ、陰影が深い。それはとりもなおさず、内面描写の深さにも通じるものですよね。派手さはないけれど、しみじみと心に染みてくる物語が多いような気がします。

プレイエルやエラールの音色もきっと同じなのでしょう。現在の日本では、映画に限らず多くのものにおいてアメリカがスタンダードになっているように思いますが、カタナンケさんのコメントにもありますように、本来、感性というものを考えるとき、風土や歴史、民族の違いを抜きには考えられないものでしょう。私が今の年齢になって、ふと立ち止まってしみじみと心を傾けたくなるものは、体温を感じられるもの、より細やかなものへと変わりつつあるようです。
ANNA
2013年11月04日 17:17
こんばんは。

カフェ・プレイエル、とても素敵なカフェですね。
歴史ある楽器の背景に絵画が写っていますけれど、絵画も鑑賞できるように
なっているのですね。なんて贅沢な空間なのでしょうか!
こちらのカフェで、aostaさんによる朗読とPapalinさんのリコーダー演奏...
とても素敵。

NHKのテレビ出演、そして松本のカフェでのコンサートと活躍の場をさらに広げられて!いつか伺う日が楽しみです。

2013年11月04日 19:15
◇ANNAさん

>背景に絵画が写っていますけれど

カフェ・プレイエルでは、ギャラリーを併設しています。ご推察の通り、絵画作品を楽しみながら美味しいコーヒーを頂けるお店。ディスプレイされている小物もオーナーのセンスをうかがわせる素敵なものばかり。スタバやタリーズは便利ですけれど、こうした落ち着いた居心地の良さはないですね。朗読は、こちらのオーナーが書かれた絵本を読ませていただこうと思っています。終戦直後、学校の教員だったお母様とアメリカ兵との音楽を通じての交流を絵本にしたものです。

明日は9時にスタジオ入り、ということで、私も行ってまいります(*^^)v
しっぽ
2013年11月04日 21:39
そうだ 明日なんだ!
プレイエル・・・あまり大きくない空間にひびく音
想像しています。
いましがた所沢の「エリア」本番から帰宅。
まだ大音量のオケや合唱の響きが耳に残っています。

そんな今想像するそのピアノの音はきっと
真清水のようなかんじなのでしょう。
ピアノは決して好きではなかったけど
坂の下のピアノ教室に幼い私を引きずっていった母に
今は感謝しています。

もうねんねかな aostaさん:



いま所沢から「エリア」終えて帰宅し
ぼーっとしてます。
2013年11月04日 22:20
◇しっぽさん

>いましがた所沢の「エリア」本番から帰宅。

さぞお疲れになられたでしょうに、コメントをいただきましてありがとうございました。
どんなコンサートだったのでしょう、想像するだけでどきどきしてしまいます。最初、しっぽさんのコンサートのお話をいかがった時は、もしかしたら伺えるかしら、とも思ったのですが、思いがけない展開もあり、結局想像だけで終わってしまいました。残念!

ピアノの音を心身ともに拒絶したくなるとき、ってあります。
疲れた時、理由はともかく神経が過敏になっている時、ピアノの響きは鋭く刺さるようで、どうにも辛い。昔のピアノの音はどうなんでしょう。
しっぽさんは「真清水」のような、と表現して下さいましたが、さらさらと清らかに喉をうるおす清水のイメージはぴたりかもしれません。
響き過ぎない、大きすぎない、心にも身体にも等身大の楽器、とでもいえばいいのかしら。

ショパンがプレイエルの響きを愛したのは、独断的な憶測ですが、その音色を最後に完成させるのが演奏者の力量にまかされていた、ということにあったのかもしれません。同じ楽器でも演奏する人によって、その音はみな違うのだということを重々承知の上で、あえて言わせていただくなら、完成された音は、完成された音として完結しているのでしょうが、プレイエルの音色は弾く人によって明らかに違う表情、違う彩りで響かせることができたのではないか、そんな風にも思います。そこにあるのは人の手のぬくもり、そのぬくもりが、ピアノの音色を、ある時は清水のように、またある時は木漏れ日のように響かせるのだと。

>いま所沢から「エリア」終えて帰宅し ぼーっとしてます。

やるべきことをなし終えて空っぽになった時間。いいなあ。うらやましいなあ。
乾杯!!
ぶんな
2013年11月05日 05:29
次つぎにページがめくられていくように、新たな展開がやってきますね。おめでとうございます!
2013年11月05日 13:44
原村の秋はこの連休で一気に進んだようですね。

山に登らなくても充分自然を楽しめる贅沢な空間です。
上高地には良く出かけていたので、新島々も良く通ったのですが、
こんなすてきなcafeがある事はしりませんでした。

きっと音楽の響きもいいのでしょうね。次々とコンサートの予定ができて、いつか私も乗っかりたいとおもっていますが、今の所、aostaさんのところのコンサートに乗り遅れています。いつかゆっくりした時間を過ごしたいと思っていますね。
康耀堂美術館も一度は行ってみたいと思っていたので、いいチャンスなのですが、今回は京都で法事があるので、残念です。
2013年11月06日 21:22
◇ぶんなさん

こんばんは。コメントありがとうございます(*^^)v

思わず一陣の風が、置き忘れられた本のページをぱらぱらと繰ってゆく光景が目に浮かびました。
風はいつも新しいもの、もしかしたら「希望」にも似たものを運んできます。
風が吹き始めた事を信じ、また願いたいです(*^^)v
2013年11月06日 21:36
◇さえさん

先日、通りすがりに赤い消火栓を目印にさえさんのお宅辺り、と思える場所を車で走ってみました。業者さんの自動車がたくさん停まっているお宅を横目で見ながら、もしかしてここかしら、と思いながら(^^♪

Cafeプレイエルは、本当に新島々駅のお隣でした。
上高地にお出かけの際は、ぜひお立ち寄りください。聞くところによれば美味しい薬膳カレーで有名なお店なんですって。ふらりと立ち寄ってもなぜか懐かしい、心安らぐ場所だと思います。響きに関しては、予想外に響いて嬉しい驚きでした。天井が高く、斜めになっている事が結果的に良かったのだと思います。
コンサートにつきましては、これからもいろいろと予定しておりますので、ご都合の付くとき、気が向いたときにお越しくだされば嬉しいです。
康耀堂美術館は、Pのコンサートのあと、春まで冬季休館に入ります。
収蔵品も、建物も本当に素晴らしい。二重丸の美術館です。
2013年11月07日 07:27
おはようございます。

業者さんの車がたくさん止まっていたのは南側の黒い家ですか?
それなら808の並びにある歯医者さんのご自宅なんです。
家はその先の北側、くるみの木一本残っている家です。
春になったら木を植えて、花も植えてと思っているんですが・・・!
2013年11月07日 07:57
◇さえさん

808近くの歯医者さんには、お世話になりました。
なかなか良い歯医者さんが見つからなかったのですが、これで安心。
至近距離で技術も確か、お人柄も良い、ほんとうにありがたい話です。
ご自宅が完成するまで、仮住まいとおっしゃられていましたが、そうですか、あのお家だったのですね。あのおうちの先の北側・・・次回はしっかりと確認してまいります(笑)
胡桃の木を目印にして!
ルネ
2013年11月16日 00:19
「プレイエルが今年いっぱいで製造を中止」という新聞記事を見て、あれ~、まだ作っていたの?と調べたら、統廃合を繰り返しながら零細企業として細々と存続していたのです!でもそれもついに終わり。由緒ある物が姿を消すのは寂しいことですね。
2013年12月15日 09:44
◇ルネさん

ごめんなさいっ!!!!
こちらにコメントをいただいていたことに今朝まで気がつきませんでした
たまたま過去記事のコメント数を眺めていたら、ここだけ奇数なんですよね。頂いたコメントには必ずお返事をさせていただいているので、基本的に奇数ということはないはずなんです。
で、コメントをよ~く見てみたら、ルネさんのコメントが一人ぼっちでしょんぼりしてるの。ルネさんも気になっていらしたんじゃないかしら。ああ、本当にごめんなさいね。

さて、プレイエルです♪
私も同じ記事を読んでびっくり致しました。かのプレイエルが「零細企業」?
何事にも栄枯盛衰がつきものとはいえ、なんともうらさびしい話題でした。大音量のコンサートピアノばかりがもてはやされる現代の風潮、もうちょっと別の風が吹いてもいいのにと思います。

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